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元魔王は愛がわからない

 キースを腕から逃して舌を打ち、湯に顔を付けて昂りをおさめる。顔を上げるとキースと視線が絡んだ。 「――夜だな」 「まあ、私が寝なければですけど」 「貴様は! そうやって昨日も寝ただろう!」 「それまでいい子にしてくださいね」  子供のようにあしらわれて、平静でいられる訳もない。今夜はキースがどれだけ嫌がろうが抱いてやると決意を固めた。  キースは笑いながら風呂から出て、また洗濯をしている。その姿を見ながら、サラギは憮然と呟いた。 「昼でも夜でも抱くことに変わらんだろうが」  むしろ昼の方が明るくてよいのにと思うサラギにキースは小さく笑いながら答える。 「これは人間の羞恥ですよ。魔族には無いかもしれませんが」 「そんなものはないな。抱くことに変わりない」 「そうでしょうけどね」  まったく人間は分からない。素晴らしく理にかなったものを作るかと思えば、こんな訳の分からない道理を突きつけてくる。  それでもサラギはそんなキースを選んだのだ。  風呂を出て洗濯の山を掴む。 「何です?」 「貸せ。俺もやる」  これで疲れたなどと言って寝られてはたまらない。キースは目を丸く見開いたあと、そっと微笑んだ。 「じゃあ、まず服着てくれません?」

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