130 / 181
島は雨
「キース」
「はい?」
手を伸ばして顎に触れると何を言う間もなく叩き落された。
「あまり触らないで」
「貴様っ、だいたいあれから一度も抱いていないだろうが、貴様が寝るから!」
「あー夜は寝るものだって決まっているじゃないですか」
なんだかんだと言いながらキースはサラギに抱かれることを拒んでいる。風呂を作ってやった日も結局先に寝てしまったし、前は容易くできた口付けすら最近は拒まれる。さすがに腹にすえかねて、サラギは机の足を蹴った。これ以上こけにされることは許さない。
「机、壊さないでくださいよ」
「っ、これだけこの俺が譲ってやったんだぞ」
キースは何も言わず、また木を弄り始めた。その手を掴んで指先に噛みつくと、キースの体が跳ねあがる。こぼれた息に艶がこもっているようで、サラギは口の端で笑った。
「貴様も欲しがっているのだろうが」
これほど感じやすいのに、何故こうも頑なに拒まれるかサラギには全く分からない。欲は満たさなければ身が苛まれるだけだ。
指に舌をからめて吸い上げると、キースがたまらないような声を上げた。
「やめ、てくだ、さ」
こんなに力ない声で懇願されて止めるとでも思っているのだろうか。だいたい、ここまでサラギを煽っておきながら焦らし続けた方が悪い。
「貴様が悪い」
指を解放するとキースはサラギの足を踏んでから、立ち上がる。
「何をする」
「触れるなと、言ったのに」
どうするのかと思えば、キースは洞窟から飛び出していった。雨に濡れることは嫌いなはずなのに、そんなに嫌なのかと怒りが堪えきれなくなる。むしろここまで堪えてやっただけでもサラギにしてみれば格別なことなのだ。すぐに追いかけて畑の前で立ち尽くしていたキースの腕を掴むみ、そのまま肩に抱担ぎ上げる。
「放せ!」
「濡れるのは嫌いだろうが」
「いいんです!」
ともだちにシェアしよう!