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島は雨

 ここまで言われて堪えてやることもないのだ。キースのことなど、何も分からない。キースとてサラギを求めたというのにこの扱いだ。人間と分かり合えるはずもないのだし、こうなればもう、サラギは自分の好きにすることに決めた。  キースを抱き上げたまま寝室まで担ぎ、ベッドに投げる。 「ちょっ、布団濡れるでしょう!」 「だったら脱げばいい」  黒い瞳が怒りを含んでサラギを睨みあげてくる。命を取り合ったときと変わらぬ殺意の炎が、久しぶりに燃えている。それを知って、サラギは身を震わせた。久しく見ていない美しいその火を、今すぐ全て欲しかった。  跳ね起きるキースを布団に押し付けて濡れた服を剥ぐ。刺されてはかなわぬと、腰にぶら下げている剣は遠くへ投げた。壁にぶつかったのか、鈍い金属音の響きに、キースがびくりと身を震わせる。 「貴様が先に俺を欲しがっただろうが」  はぎ取った服は剣と同じく遠くへ投げ捨て、もがく手を力ずくで布団に縫いつけると、キースが不意に顔を背けた。その唇が屈辱故か、震えている。それが酷くサラギを煽った。 「キース」  耳元で囁くと、それだけでキースは跳ねあがる。 「あっ」  屈辱に震えていたかと思う口が、やけに甘い声を漏らして思わずサラギはキースの顔を覗き込んだ。  そこには頬を染めたキースが、欲に濡れた目で空を睨んでいた。  ただ、耳元で囁いただけだ。それだけでこんな顔をされてはたまらない。

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