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島は雨

「……キース」 「っ、喋る、な」 「何もしていない。名を呼んだだけだろう」 「触れる、な」  もしかしてこれは。  服をまとわないキースの白い肢体を肩から下へと撫でてみる。それだけで、キースが悲鳴を噛んで跳ねあがり、その姿で確信した。 「貴様、発情しているな」 「――っ、そんな言い方!」 「だから、触れられたくないのか」  自分一人がキースを欲してたのかと思えば、キースもちゃんとサラギを欲しがっていたのだ。それを一人耐えていたとでもいうのだろう。 「馬鹿が!」 「し、仕方ないでしょう!? 貴方に触れられると、勝手に、こうなるんです」  布団に縫いつけていたサラギの手を振り払って、キースが身を起こしサラギに殴りかかってくる。避けきれず肩に受けた拳は、少しもなまっていないのが憎らしい。  寝床から逃げるつもりのキースの足を掴んでもう一度布団に縫いつけると、睨まれるのも構わず口付けた。欲しいなら欲しいと言えばいいものを、なんと面倒なのだろう。 「これも人間の羞恥とやらか」 「……私の、矜持の問題です」 「俺に抱かれたがっていると思い知るのが怖いのか。面倒なやつだ」  だったらもうキースを待ってやることなどしない。無理矢理に奪えばこれはサラギの欲を満たす為だけの行為になるだろう。  キースはそれを望んでいるのかもしれない。だったらそれでいいと、サラギは思った。

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