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元勇者の事情

 首を啄んでいたサラギの口が鎖骨を乱暴に噛む。 「いっ」 「鳴けと言っただろう」 「いや、です」 「強情が」  なぜか嬉しそうに笑ったサラギが臍の周りを撫でた。一見、手荒そうなサラギの手管は、実はそれほど乱暴ではなく、その柔らかさにもキースは揺さぶられる。  いっそ、乱暴に無理矢理に暴かれた方がどれだけ楽だろうか。こちらの欲望をも煽ってくるサラギのやり方は実に人間の恋人同士のようだった。  臍の周りを撫でていたサラギの手がようやくキースの股を揉む。それだけで、限界だった。 「あっ」 「貴様の体は耐えることを知らんな」 「っ、そんなこと!」 「もう鳴いているではないか」  ぐじゅと濡れた音をたててサラギの指に擦られるそこは、実にだらしなく悦びを表している。その音を聞いてしまうと羞恥に全身が震える。それが好きなのか、サラギの指は執拗だった。先端を撫でられ濡れた指が茎の根元まで包みこんでは激しく擦っていく。 「――ぁ、は、っ」 「これでは女など抱けまい」  喉の奥で馬鹿にするように笑われ反論したいのに、今声を出しても言葉などは出てこず、殺した嬌声が上がるだけだろう。だからキースにはサラギを睨みつけることしかできないのだが、サラギはそれも気にいっているらしかった。 「いい顔をする」  口元に笑みを浮かべるサラギの顔こそ、欲にまみれて凄絶に美しく、淫らだった。それを見ているだけで達してしまいそうになるのはもう、どうしようもないのだろう。 「あ、っ……!」  サラギの手に包まれたままで、達した。息が乱れてしかたがない。  息が整う間もなく口付けられて、痛いほどに舌を吸われる。絡んでくるサラギの舌を舐めると、ざらりとした感触に、また萎えたはずの欲望が煽られる。  一体、自分の体はどうしてしまったのだと思うのは遠くにある理性で、そんなものは簡単に欲望に流されてしまってどうしようもない。 「んっ」  口付けから解放されて布団の上で呆けるキースを、サラギはじっと見つめるとそのまま抱きあげた。膝の上に乗せられる子供のような格好に羞恥でまた身が熱くなる。 「なん、ですか」 「この前のように乗れ」  まだぼんやりした頭ではサラギの言葉をきちんと理解することもできず、キースは力なくサラギの首に抱きついた。

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