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元勇者の事情
「食うなと言っただろうが」
それでもキースをはがすつもりはないようなので、そのまま首にすがりついて肩を噛んだままでいようと決める。
「壊れるなよ」
その言葉と同時に腰を掴んでいたサラギの手が激しく揺れる。体をゆすられ内側を擦られ、足の先から頭の先までが、切り裂かれたようにびりびりと痺れた。
「い、やだ、嫌っ」
こんな場所は鍛えることもできない。生まれたときから、誰にも触れさせることもなく、自分ですら触れたことのないような場所を、サラギに暴かれている。何も知らなかった肉が、サラギだけを知っていく。
それは壮絶な恐怖であり、強烈な快楽だった。
サラギの肩を噛んでいた口が勝手に声を吐きだし始める。
「あ、ああっ、だめ、だ、こんな」
少なくともこの場所だけは間違いなくサラギのものになっていくのだ。
全身の粟立ちが止まらない。恐怖と快楽、両方に支配されてもう何がなんだか分からなくなる。
「キースっ」
息を乱したサラギがキースの顎を掴んで、まっすぐに顔を覗き込んでくる。欲に濡れた目は、やはり美しい。
「貴様、今、己がどんな顔をしているか分かっているのか?」
「し、らな、い」
「だろうな……こんな、極上の――誰にも、やらん。これは俺のものだ――」
そのまま、より深く穿たれ、骨が折れそうに抱きしめられ息が止まった。
貫かれ擦られ抉られる快楽は耐えようもなく快かった。
「んっ――もう、いや、だ」
「そう嫌がるな」
面白そうに笑って、サラギの動きがより激しくなる。もう声を噛むこともできなかった。
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