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愛とは?
「と、とにかく。私が小屋の造り方を学んで貴方に教えるので、貴方はその間、図鑑でも見ててください」
指されたのは机に残った赤い皮表紙の図鑑だった。手に取ると、小屋の造り方よりもずっしりと手に重さが残る。城にいるときに見たものと少し似ている気がして興味深い。せわしなく頁をめくると、色のついた頁に出くわす。
それは、キースの彫っていた木彫りの蝶に似ていた。
「これが蝶か」
思わず呟いたサラギの横から図鑑を覗きこんで、キースが、ああ、と相槌を打った。
「そうですよ。美しいでしょう」
確かにサラギの知っている蝶とはまるで違う。そこに描かれていた繊細な生き物は、キースのいうように硝子を透かしたような色をしていて、知らず息を飲んだ。
薄紫の羽に漆黒の線を描く、まるで職人が作り上げたような繊細さ。これが自然に生み出される生き物だとは到底思えない。
「これは飛ぶのか」
「飛びますよ、立派な羽でしょう? 大きさはそこに描かれている通りなので、手に取ることもできますよ」
欲しい。久しぶりにサラギは強く思う。こんな生物が自然発生しているのだ。人間の作りだすものが美しいのも納得だ。力さえあれば、この人間界を全てこの手にできるというのに。
他にも珍しいものがないか、サラギは夢中で頁をめくった。
「これ良い図鑑なんです。色を付けているのは珍しくて。高かったけど、貴方がそんなに喜ぶなら買って良かった」
「だから鶏の分、金が無かったのか」
「違います」
キースは何食わぬ顔で笑ったが、きっとサラギの言ったことは当たっていたのだろう。それくらいは、分かる。サラギの隣から離れようとしたキースを抱き寄せて、口付ける。何故か、そうしたかった。
「んっ、なに、急に」
「分からん、したくなった」
「貴方はいつもそれだ」
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