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元勇者の事情 2

 サラギの声で思考から連れ戻され、また感情が顔に出ていたのかと自嘲すると、サラギは小さく息をついた。 「貴様の考えはまるで分からんな」 「――すみません、私もそう思います」 「俺は貴様が手に入ればそれでいい」  キースもそう思いたい。今は目の前の男と過ごす時間だけを大事に大事にしていたい。キースはサラギより確実に早く死ぬ。そのわずかな時間をサラギと過ごすと決めたというのに、この体たらくだ。 「私も貴方くらい強くなりたいですよ」  サラギは何も言わずキースの肩を抱き寄せた。しばらくそのままで二人して鶏を見つめていると、鶏が乾いた土を体に浴び始める。 「キース、あれは何だ!」 「ああ、砂浴びですよ。あれで体に着いた寄生虫を払っているんです」 「賢いな」  褒めた。元魔王が鶏を褒めた。キースのことは使えないと罵るサラギがだ。多分、サラギは鶏を大分、気にいっている。それが面白くて、吹き出しながらキースはそっと口を開いた。 「貴方、今日から鶏係りですよ?」 「何だそれは」 「世話をよろしくお願いします、ってことです」 「何故俺が!」  憤るサラギは、けれどきっとよく面倒を見るんだろうなあと思うキースだった。

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