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鶏の名は
「名の付け方など知らん」
抱いていた鶏を地面に下ろしてから、キースは嬉しそうにサラギの顔を覗き込んでくる。
「何でもいいんですよ、貴方の好きなものでもいいし、見た目の特徴でもいいし」
そんなことを言われても思いつかない。好きなものといってもキースくらいのものだし、見た目の特徴といっても、鶏は鶏だ。
腕を組みながらしばらく鶏を見つめていると、キースはおもむろに剣を取り出し、鶏小屋の隣でその剣を研ぎ出した。
キースの研ぎ石は小さい。そんなものでよく研げるものだと思うが、物にこだわらぬキースはこんなところまで無頓着だった。
――何より、剣にこだわらぬ剣士などいるか。
サラギとて自らの剣はこだわりぬいて自らで選んだ鍛冶師に打たせた。手入れはいつもその鍛冶師にやらせていたし、人間界まで連れてきた程だ。今はどこでどうしているか分からないが、できれば今も鍛冶師に手入れをさせたいくらいなのだが、仕方がないのでキースの研ぎ石を借りて渋々手入れをしている。
けれどキースにとってはなんら不満もない研ぎ石のようだった。
ちらとキースを見下ろして、眉を顰める。
「貴様の剣はよく変わるな」
サラギの足元に座り込んで剣を研いでいるキースは不満そうにサラギを見つめ、少し語気を強めながら言う。
「貴方の剣を受け止めていたらすぐ傷むんです」
「人間界にもましな鍛冶屋がいるだろう。それに打たせないからだ」
「名工の作は高いんですよ」
値段など何だというのだ、命を賭ける武器に対してこだわるべきはそこではないだろう。特に、人間などという脆弱な存在ならば、より強いものを選ぶのは当然の策だ。
「貴様……俺の剣を安物で受けていたのか」
「いや、さすがに魔王と戦うときはいい物を持てってマリーが選んだので、これとは全然違うものでしたよ?」
「それはどうした」
「あー、誰かにあげましたね。もう貴方と戦うこともないだろうと思って」
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