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鶏の名は

「やってもいいが」  一歩引きながら愛剣を抜き、切っ先をキースに突きつける。苛立ちが止まらず体中に殺気が立ち込めた。それを察したのか鶏が騒ぎ出し、キースの目から炎が消える。そのままキースは剣を引いた。 「やめておきます。鶏が怖がっているので」 「そんなことは知らん」 「ほら、早く名前付けてくださいよ」  一瞬前の激しい戦意など嘘のようにキースは笑った。それを見ても、サラギの苛立ちは無くなりもしないが、キースにやる気がなければどうしようもない。油断したキースの手から剣を奪って力任せに洞窟の岩に叩きつけると、剣の切っ先が欠けた。 「あー! ちょっと何してるんですか!」  キースの顔色が青くなり、それを見ると少しだけ留飲が下ったので、戦ってやろうという気は失せた。  が、駆け寄ってきたキースはそうはいかないらしい。人間の感情を読むことが得意ではなくても、これは分かる。キースは怒っている。 「貴方ねえ!」 「怒ったか」 「当たり前でしょう!」 「この程度で折れる剣なら、俺の剣を受けたらどのみち折れる」  だからもう少しましなものを買えばいい。  そう続けたが、キースは聞いているのかいないのか、体中から怒気がみなぎっているようだった。  少し、やりすぎたかと思う。

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