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元魔王は愛がわからない・キース

 魔法使いはサラギの封印を確認にきたのだと言った。そんなことの為にわざわざ御苦労なことだと思ったが、魔法使いの真顔を見るに、それは重要なことなのだろう。それはつまり、サラギの力が大きくなっているということでもある。  恐れられるのは悪くない。それがキースすら頭が上がらないという魔法使いであれば、尚更だ。  魔法使いは何をどう確認しているのか、サラギの手を掴んで握りしめたあとそっとこぼす。 「まあ大丈夫だろう」 「これがなければ俺は自由に魔法を使えるのか?」 「そんな訳ないだろう。契約をして修行をして、それからだ。それより、お前、私に用事でもあったのか? さっきちょうどいいと言っただろう。キースに何かあったのか?」  ああ、と頷きながらサラギは畑の真ん中でキースの植えた野菜の葉を啄んでいる鶏を指さす。 「あれの名を考えろと言われた」 「鶏? はは、ついに家畜まで飼いだしたのか。で、その鶏の名を付けるのか」 「キースが言いだした」 「それをお前に付けろと。キースらしいじゃないか。お前が鶏に愛着を持てるようにだろう」  何故、言葉も交わしていないくせにそんなことが分かるのか、と一瞬不愉快になる。サラギにはキースのことなど何も分からないのに、同じ人間だというだけでそんなに分かるものなのか。サラギの顔を覗きこんだ魔法使いが声を上げて笑うのも不愉快の原因ではあるが。 「お前、分かりやすい嫉妬するんだな。ふん、意外に御しやすいのか? まあいい。名前くらい付けてやればいいじゃないか」 「くだらん」 「そんな訳ないだろう。キースがお前の為に頼んだことだろう?」

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