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元魔王は愛がわからない・それが愛だよ

 鶏の名は「白」と「茶」に決めた。キースは安易だと笑ったが、それでも嬉しそうにサラギに礼などを言ってくる。その度に、サラギは言いようもない満足を感じては首をひねった。こんなどうでもいいことで、いちいち満たされるなどどうかしているとしか思えない。  魔界にいた頃の空虚感や飢餓感は何だったのだろうと思うほど、キースが笑うと満たされる。それが自分のしたことによる結果だったときなどの満たされ方は、他にはない充足感だった。あの体を抱いて貫いたときとは違うこの快楽は何なのだろうと思うが、サラギは悪くないと思っている。  否、その言葉では足りないほどに。  ――俺は、好ましいと思っているのだ。  この感情の意味を問うてみたかったが、なんとなくキースに聞くのは憚られた。また魔法使いが来るのを待つかと思いつつ、そんなことを考える自分に驚愕する。魔法使いは間違いなく敵だ。それを頼るなど考えられないことだ。  ――俺は一体、どうしてしまったのか。  何より、その変化を嫌悪していないことが一番の問題だろう。そんな問答を毎日してしまう。  そんな時だった。キースが熱を出して倒れたのは。

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