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それが愛だよ
キースが熱を出すのは三度目だ。一度目は呼び出した炎で腕を焼いたとき。二度目は魔法使いに焼かれかけたとき。それから、今。
少し具合が悪いので、と言いつつ寝床で横になり、それきり起きてこなくなった。
「おい、大丈夫か」
「大丈夫です、しばらく寝ますね」
力なく笑うキースの息は上がっていて、触れた頬は焼けるように熱い。何か看病をと思うのだが、前回と違って原因が分からない。薬草は傷にしか効かないらしく、サラギにはもう何もできなかった。
「寝てれば治るから、本当大丈夫ですよ」
そんなことを言って眠りについたまま、もう三日目だ。
人間の病気のことは分からない。熱でうなされたまま三日寝込むことは、どれくらい「普通」のことなのか。その間、時折欲しがる水を口にしただけで、何も食べていないが、それでも大丈夫なものなのか。
何度も頬に触れては、その熱が下がっていないことに落胆してしまう。うわごとで暑がるので、川の水を汲んで来てそれに手を浸しては頬に触れてやる。そうすると安堵したようにまた静かに眠るのを見つめながら、サラギは舌を打った。
「何もできんな、俺は」
黒い瞳が見たくて顔を寄せても、その静かな炎は見えない。減らず口が聞きたくて口元に耳を寄せても、苦しげな息が吐き出されるだけだ。人間が脆弱な生き物だということは知っていたのに、何故己はこの時の為に手を打っていないのだろうと悔しかった。
「そもそも、貴様がこういうことは準備するものだろうが」
人間は病気の時、薬を飲むらしいが、キースの持ち物にそんな物は見当たらない。こうなったとき、キースはどうするつもりだったのか。
「また己を粗末に扱うつもりだったのか」
魔法使いが言うには、他の人間を一番に考えるのは昔からで、もう悪い癖としか思えない。
『貴方のこだわりが強すぎるんですよ』
キースの減らず口を思い出して苦笑しながら、ならばと心に決めたことがある。
――キースが己の身に無頓着ならば、俺がこだわってやる。
なんだかんだ文句を言いながらもキースはサラギのこだわった物は大切に扱った。だから、そんな風に、サラギがこだわるキース自身を大事にするといい。目が覚めたら、必ずそう言ってやろうとサラギは強く思った。
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