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第7話
社員旅行はいい感じに進み、それなりに楽しくなった。
そんな旅行も今日で終わってしまう。今は、旅館の宴会部屋のようなところで、食事と介して飲み会が行われている。司会をしてくれている隣部署の社員に俺の名前が上がった。
「え~。今回の旅行の企画や計画、この旅館をおさえてくれた暁さんありがとうございました。」
俺は軽く周りに会釈をして司会に視線を戻した。すると、我慢の切れた課長が乾杯に無理やり押し込んだ。
「では皆様。最後になりましたが、今日は楽しんで終わりましょう。乾杯!」
周りの人と軽くカチンっとグラスを鳴らして1口酒を飲んだ。
相変わらず旅館の料理は美味しそうなものばかり運ばれてきた。
金目鯛の煮付けやお吸い物。胃に優しいメニューになっていた。お酒のツマミにお刺身の盛り合わせが出てきた。
皆、それぞれ口に運んで味わっている。女子社員の方を見るとたなゆいさんが佐藤さんと手酌をしていた。あの二人この旅行で仲良くなったらしい。
そういえば俺も小林とこの旅行で仲良くなった気がする。仲良くというよりも、距離が近付いたの方が正しいか。
「暁さん。」
するとちょうど小林に呼ばれた。振り返れば、微妙な顔をした小林が俺を見ていた。
「どうしたー?」
「さっきから、佐藤さんがこっちを見てるんですけど、先輩何かやらかしたんじゃないですか?」
そういえば、この前も佐藤さんは俺達のこと見てた気がしたな。あれは気のせいじゃなかったようだ。ただ、彼女に何かしでかす程にこの旅行中、話した記憶がない。
「んー。俺は記憶に無いしな。まぁ。大丈夫だろ?」
「…そうですか。」
妙に歯切れが悪く会話は終わってしまったが、会場の雰囲気に呑まれ、そこからは特に気にしなくなった。
夜21時を回った頃、社員一同物足りなさを感じつつも宴会はお開きとなった。今回の課長は二日酔いを残さないよう、立てなくなるまでは飲んでおらず介抱させられる側はとても楽だった。
俺も最後まで残り、片付けを手伝った。途中、小林や佐々木も手伝ってくれたが22時を過ぎた為、部屋に返した。
座椅子を片付けて端によせ、あとは旅館の人に頼む。気付けば23時前だった。
小林に心配をかけると思い急いでその部屋を出た。
オレンジ色の電気の着いた廊下を歩いて帰っていると、後ろから可愛らしい声で「暁さん」と呼ばれた。
振り返れば、佐藤さんが俯き気味に俺を見ていた。
「ん?どうしたの佐藤さん。もう遅い時間だよ?大丈夫?」
こんな時間に女性一人で大丈夫かと、心配して声をかけると「大丈夫です!」と慌てて言葉を返してくれた。
「あ、あの。少しお話があって…。いいですか?」
「うん。いいよ。あ、場所変える?」
顔を覗き込むようにして聞いてみると「ここで大丈夫です。」と言われてしまった。こんな廊下のど真ん中でいいのだろうか……?
少し気になりつつ俺は佐藤さんの話に耳を向ける。
「そっか。で、何だろう?」
「あ、はい。あの…突然ですみません。わ、私…暁さんの事が…。す、好きです…。」
突然の告白に俺は、少し戸惑った。
顔を真っ赤にして下を向き、言葉に詰まりながら告白をしてくれている彼女を見て、自分がゲイじゃなければ嬉しくて飛び上がっているんだろうなと、思った。
たしかに可愛らしいなとは思うけど、そこまでだ。
だから、俺の答えは決まっていて。
「ごめんなさい。でも、ありがとう。」
こう言うしか出来ない。俺がゲイだって言ったらこの子はどう思うかな。急に気持ち悪くなる?嫌いになる?どっちだろう。
まあ。絶対に言わないけど。
「…そっか。そうですよね…私なんか…。ごめんなさい!でも、聞いてくれてありがとうございました!」
そう言って佐藤さんは部屋にそそくさと帰って行った。
俺も向きを変えて自分の部屋に戻って行った。
部屋に戻ると小林はもう寝ており、部屋の電気が小さくついていた。
俺は小林が寝ている方の襖と電気を消して、窓の近くに行きスマホで今日で見納めの景色を撮影した。
そして、気まぐれに皐月と裕太にメールで送り付けた。
すると2人ともすぐに既読が付き、2人で風呂に入ってる写真を送ってきた。
そして、皐月から一言送られてきた。
『俺たちも旅行に来て部屋の露天風呂でヤったところ~。』
「ふっ…まじかよ。元気だな~」
俺は適当に返事を返してスマホの電源を切った。こうやって、なにかあっても何も聞いてこないセフレは楽で絡んでいるうちに嫌な気分を忘れられる。今更、セクシャルの事について悩むなんて。もし、裕太や皐月に言ったら、らしくないと笑われるだろう。だけど、仮に皐月と裕太は俺が悩んでいてもそっとしておいてくれて一緒にいて心地が良い。
俺も皐月と裕太の所に行きたいな、なんて思いながらまた窓の外を見た。
外は特に目立った明かりはなく、川の音が聞こえてくる。少し肌寒いがこれもまたいいだろう。酔い冷めになる。
少しして眠くなった俺は深夜2時を回った所でやっと布団に入った。冷えきった身体は布団に入れば、だんだん温まり気付けばグッスリ眠ってしまっていた。
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