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第19話

意味を察して状況が飲み込めたのか、廊下にいた小林はリビングにやっと入ってきた。しかし、小林の顔はまだ不安そうで何処か信じられないという顔をしていた。 俺も正直、告白の返事を返すつもりでは無かった。いや、言葉ではまだ返事はしていないけど。それでもあの行動はOKという意味でもあって…。 俺は椅子に座り小林を目の前の椅子に座らせた。 そして自分が思っている事を全て話す事を決心した。 「正直、俺はお前が好きだよ。でも、多分。お前は、俺と付き合うより将来的に肩身の狭い思いなんてしない、女と付き合った方がいいと思ってる。」 小林は俺の話を真剣に聞いていた。何を思っているのか分からない表情で。 「だから、俺がお前に返事をしてしまう前に諦めて…」 「何言ってるんですか。俺は暁さんが好きなんです。また、失うのが怖いですか…?」 凄い剣幕だが、何処か恐る恐る聞いてくる小林に俺は頷く事しか出来なかった。小林は俺が思っている以上に本気なんだろう。こんな小林を俺は見た事がない。 「…怖い。怖いよ。当たり前ってすぐに無くなるから…。」 「…暁さん。失う事が怖くて俺から逃げないで…?少なくとも貴方よりは長く生きますよ。俺の方が年下ですから。」 優しく俺の手を小林の大きな手が包み込んだ。 そして顔を上げると小林は俺の額に唇をちゅっと落とした。 そうされると何故か色々と、どうでもよくなってきた。久しぶりの感覚に俺は少し泣きそうになった。好きな人と居ると安心するこの感じを小林に感じている。 「好きです。涼太さん。」 「っ…!」 今まで以上に真剣な面持ちで俺を好きだと言う小林にこれはもうダメだと心が言っていた。素直になれと。ならば仕方ないだろう。素直になろう。 「おれ…も。」 「…え?」 「俺も好き…です…。」 精一杯そう伝えると、小林は椅子から立ち上がり俺を骨が軋むほど強く抱き締めた。 「…良かった。貴方を諦めないでいて。」 小林はどこか泣いてしまいそうな声でそう言った。あんなに曖昧な告白だった為、実際は冗談かとも思った。けれどこんなにも俺を好きでいてくれた小林が、今は好きでたまらない。 「暁さん。晴れて両想いということなので、キス。してもいいですよね?」 「え、あ。ちょ…んっ!」 きつい抱擁から解放されたかと思えば、顎をすくわれ半ば強引に口付けをされた。 久しぶりにする愛しい相手とのキスはとても心地良いものだった。 舌を焦らす様に絡められ、たまらない気持ちとなる。混ざり合った唾液が飲み下しきれず、顎に伝う頃。やっと口が離された。 「…っはぁ。」 「はぁ。…えろ。」 俺はほとんど抜けている腰を小林に支えてもらい、やっと立っている状況だ。セフレとのキスではこうはならない。これも、全部小林のせいにしてしまえ。そう内心悪態をつきながら、小林にベッドへ運ばれている。 俺と少ししか身長は変わらないのに男の俺を軽々と抱き上げている。どこか負けた気さえする。 そんなことを考えていると、ベッドに押し倒されてしまった。反射的に小林を見上げると、熱の籠った視線と目が合った。 「…するのか?」 俺がそう聞くと小林は表情を変えずに「させてください。」と言った。 そして俺が着ているスウェットの中に手を入れてきた。その感覚にピクリと反応すると小林は更に身体を撫でまわし始めた。その手は腹や腰、背中をなぞる。 そして好き勝手触り回していた手のひらが、掠めるように胸の尖りに触れた。反射的に漏れそうになる声を唇を噛み何とか耐える。しかし、俺の反応を楽しむ様に小林はその尖りを確かに触ろうとしない。俺はいつまた悪戯に触られるか気が気ではない。 しかしそんな俺を置いて、小林は俺の服を脱がせて首や鎖骨を軽く吸った。そして、何がそんなに楽しいのか俺の肌を撫でている。 「綺麗ですね、暁さん。」 「っ…!」 突然、そう零した小林に俺は赤面した。 そんな事、誰にも言われたことが無い。第一男の身体なんて綺麗では無いだろう。女の身体なら分かるが。 「顔が赤いですよ?…ふふ。可愛い。」 「ばっか。お前が…!」 「俺が?」 悪気のない顔をして俺を見る小林に俺は諦めた。 「はぁ…。もう、好きにしろ…。」 ◆◇◆◇◆ 「はァ…っ。…くっ!あぁ、ダメそこっ…!」 じゅるるっと立ち上がった俺のモノを小林が啜り上げる。手の甲を口にあて声を出さない様に耐えるが、小林の舌は俺の弱い所ばかりを攻め立てる。 「はぁ…くっ。ん"ッ…!やだ…っそこ…やだっ!」 容赦なく舐め上げられ、強い射精感に苛まれる。 口を話そうと小林の頭を押すが、離す気が無いのかそのまま吸い上げられる。 「あ"ッ…はな、せ…ばか。出る…っ。───!!」 俺はそのまま小林の口に自信の白濁を出した。すると小林は出したものをゴクリと飲み下した。 「はぁ…っはぁ。お前っ…飲んだ?」 「…はい。」 「まじか…はぁっ。はぁ。」 「大丈夫ですか…?」 こうしたのはお前だろうと言いたいがそんな事を言うのも億劫だ。 俺はふと足に当たっているモノを意識した。 それは小林の小林だった…。彼のモノは熱く熱を持ち雄々しく立ち上がっていた。俺はスラックスの上から小林のソレを撫でた。 すると小林が俺の手を掴んで手の甲を自身の唇に押し当てた。 「それ以上やられると色々もたないので俺の事はまたの機会にしてください。」 「…っ。お前だけずるいな。」 「お互い様ですよ。ほら、足開いてください。」 小林は俺の足を割って入り膝を持ち上げて、俺に抱えさせた。こんな羞恥心しか感じない格好は初めてだ。 そしてローションを手に取り後ろをほぐし始めた。久しぶりに受け入れるそこは異物感がすごかった。少しづつ息を吐いて力を抜くが、上手く出来ない。 すると、小林が俺の萎えてしまったソレをゆるゆると擦り始めた。 「はぁ…っ。まっ…。あっ…!」 緩い快感に気づけば、後ろの準備が終わっていた。 「はぁ…。暁さん。終わりましたよ。…入れていいですか?」 「う…っは。もう焦らされすぎて、つらい…っ。」 俺は恥ずかしさで顔を隠しながらそう答えた。すると、膝を掴んで一気にすごい質量の灼熱が入ってきた。 「あ"ッ…!ま、って…く…。っはァ…ん"!」 「はぁ…くっ。キツ…大丈夫ですか?」 「や、ばい…久しぶり過ぎて…っは。腹、くるしッ…んっ。」 腹に強く感じる圧迫感と慣れないこの感覚。世のネコ役は改めて凄いと実感する。 そして数年前の俺はここで、よく感じる事が出来たなと思う。 俺の様子を見て小林はまた俺のモノを強く擦り始めた。くちゅくちゅと濡れて、無意識に小林のモノを締め付ける。すると、自分で力を加えた事によって前立腺に擦れた。ピクリと身体を快感が駆け巡った。 「ぁう…やば…。」 「…暁さん、良さそうですね。こんなに濡れてる…。」 「動きますよ」と小林は言いゆっくりと動き始めた。中の気持ちいい所をこすり続けられる。 勝手に出てくる声を抑えようと、手の甲を噛み締めていると小林から外されてベッドに両手を抑えて込んでしまった。 「あ"ッ…な、んでっ…ばっか…ん"っ…!」 「声…っ聞かせてください…!」 どんどんと激しくなる行為に、何も考えられなくなってきた。 口から出るのは言葉をなさないものばかりで、喘ぎ泣く事しか出来ない。しかし、小林はそんな俺を愛おしそうにでも、餌を狙う獣の目をして抱いていた。 「はぁ"…も、もうっ…イクっ"。あ"、ぁん…。」 「はぁ…良いですよ。くっ…俺もっ!」 互いが限界に近付き動きが更に早くなる。 小林から与えられる快楽がキャパを超え突然、頭が真っ白になり高い所から落ちるような浮遊感の様なものを覚えた。 「─────っ!」 「──くッ。はぁ…っは。…イった?」 「っ…は。気持ちよくて…な、んか。怖い…っ!」 俺は何度もイク感覚とそれに伴う浮遊感が怖く感じ小林に抱き着いた。小林は俺を強く抱き締め「大丈夫。」と囁いた。 ◇◆◇◆◇ あの後、どれくらい互いを求め合ったのだろう。気付けば寝ていたようで、朝起きると隣に小林が居り。俺の頭を撫でていた。 「暁さん。好きです。」 「…そーですか。」 小林は俺に素直に言葉を伝えてくる。けれど、俺はその言葉を素直に返す事が出来ない。 気恥ずかしさと嬉しさと失いたくない気持ちが複雑に絡み、素っ気ない態度になる。だけど、その事を分かってか、小林はただ好きだと言うだけで何も求めてこない。 今はその気遣いが嬉しくも思うが、それと同時にいつか素直に恥ずかしさも感じる事無く「愛してる」と言ってやりたい。

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