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あいつとの出逢い 3

ビン底眼鏡をかけているのに衝撃を受けた。 「これがビン底眼鏡というヤツか! 実際かけるとこんな感じなのか!」 と、不覚にも感動してしまった。 不自然に小さい目が冗談ではなくコントの道具にしか見えない。 とにかく、こんなへんてこりんな格好のヤツと一緒にいるところを、知り合いにでも目撃されたらたまったものではない。 那津は、自分がよくも悪くも目立つ容姿だという自覚がある。 だから、周囲を気にせず一人でまったりスイーツを堪能したいときはこのファミレスに来る。 ここは子供連れの若い母親たちとか、ランチを摂る営業マンとか、年配の団体だとか、いつもそんな客層だ。 店員を除いて、同年代の客はほぼいない。 だからこの七嶋という男が現れるまで、この場所は那津の憩いの場所だったのだ。 デートでは絶対注文しない特盛の抹茶パフェを味わって、悲惨な現実から逃避したかったのに、とんだ邪魔が入ってしまった。 「お願いします! 弟子にしてください!」 七嶋は風を起こす勢いで、再びガバッと頭を下げた。 今度はテーブルにぶつけなかったことにホッとする。 そんなことになったら、また注目を浴びてしまうからだけど。 「お願いします!」 それにしてもなんなんだ? この七嶋という男は。 国立大学生ってのは、こうも自己中心的な人間ばかりなんだろうか。 他に知り合いがいないから比べようがないけれど。 ――はあ……。もう、ため息しか出ねえ……。 「あのさ。――七嶋さん? 今日初めて逢ったばかりで俺あんたのこと何にも知らないし、そもそも弟子なんか取るつもりないし、いくら頭下げてても無駄だから、諦めてくれないかな……」 七嶋は諦める気がないのか、頭を下げ続けている。 この様子だと、那津が受け入れるまでここを動くつもりはないのかもしれない。 「僕はあなたが首を縦に振るまで、決して諦めませんから」 やっぱりそうか。 ーーもう無理。 付き合いきれねえ。 那津は七嶋に気づかれぬよう素早く伝票をつかみ、クリームのついた口元を拭うと、鞄を抱え出口へダッシュした。

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