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ベタな男 1
男友達と二人で出かけるなんて、いつ以来だっけ。
記憶にないから、小学生の頃だろうか。
いや、でも、あいつとはまだ友達というわけじゃないし、べつにワクワクするとかそういうんじゃない。
決して。
那津が小次郎に指定したのは、東京都下の大規模なショッピングモールだった。
都心へ足をのばすことも考えたのだが、あの小次郎と一緒に都会の街を並んで歩く勇気はなかった。
万が一、知り合いにばったり会わないとも限らないし。
送迎バスを降りて、ショッピングモール東ウイング入口へ到着した。
オブジェのような巨大なベンチには人待ち顔の男女や、小さな子供連れの若い夫婦、年配の男女の団体などであふれていた。
やっぱりここなら、野郎二人の待ち合わせでも不自然じゃないし、うろついても悪目立ちしないだろう。
「あ、いた――」
見覚えのある黒いボサ毛と眼鏡が見えて、那津は小次郎へ近づこうとした。
けれど、足が金縛りのように固まってしまった。
ベンチは空いているにも関わらず、小次郎はなぜか立っていた。
真面目人間だから座ってはいけないと思い込んでいるのか、それだけでも周囲からやや浮いているのに、
――え……こんなに酷かったっけ?
那津は十メートル離れた場所から、小次郎のファッションセンスが最悪なのだと改めて感じていた。
初対面のときは、白いTシャツにジーンズだったから、ただ野暮ったいイメージだった。
しかし、ここまで来て声をかけるのをためらうほど、小次郎の服装は酷かった。
カラスのように真っ黒な髪は伸ばしている最中なのかほったらかしているのか、中途半端でボサボサだし、
色あせたグリーンのポロシャツはサイズが大きすぎるようで肩がずいぶんさがっているし、
ベージュのチノパン、に見えなくもないパンツにシャツをインしている。
ベルトもダサい。
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