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ベタな男 3

顔をのぞき込まれ、八の字になった小次郎の眉を見て思い出す。 そうだ、俺は数日前変な男に首を絞められて、小次郎に助けてもらったのだと。 「あ……うん、大丈夫だよ。よく眠れた。俺って結構神経図太いのかもなあ。あんな目に遭ったってのに毎日ぐっする眠れるし」 「そうですか、それならよかったです。……でも」 小次郎はやや硬い声色で言った。 「あんな事はそうそう体験することじゃありません。日が経ってから思い出したり怖くなったりすることもあるので、そのときは必ず僕に連絡してください」 「わかってるよ。大丈夫だと思うけどさ」 小次郎に助けられた日。 俺は女子じゃないのにかっこ悪いなと思いながらも、小次郎に自宅まで送ってもらった。そして、メールアドレスと電話番号を交換したのだ。 那津の自宅は駅から徒歩十分ほどだが、現在一人暮らし中の小次郎のマンションは反対の南口から徒歩五分らしい。 小次郎と別れ、那津が自分の部屋に入って十五分後ぴったりに、小次郎からメールが入った。 《今夜はゆっくり休んでください。不安になったり怖くなったりしたら、すぐ僕に電話でもメールでもしてくださいね》 その真面目な文面に思わず口元が緩んでしまった。 出逢ったばかりの人間なのに、あの面白い眼鏡顔を思い浮かべるだけで不思議と安心できた。 本当にほだされたのか、危険なところを助けてもらったから、「吊り橋効果」的な感じなのだろうか。 それから小次郎のメール攻撃は毎日だった。 「変なヤツだよな」とか言いながらも、メールを読む那津の口元はやっぱり緩んでいた。 学校でその顔をハナやイチカに見られて「なっちん彼女できたの?」と言われたくらいだから、よほど自分は楽しそうに画面を見ていたんだと思う。

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