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ベタな男 4
メールは別に問題ないのだ。
問題なのは、小次郎の宇宙人的(?)なファッションセンスだ。
「あのさ小次郎、訊いてもいいか」
「はい、なんでも訊いてください」
小次郎は、那津に会ってからずっとニコニコしていてそりゃ楽しそうで、それが那津にも伝染したのか、感情と関係なく口元がムズムズしてしまう。
ビン底眼鏡で隠れている目も、おそらく三日月のようになっているのが容易に想像できる。
「お前さ、そのー……服、とかは自分で買いに行くわけ?」
「あ、これですか。これは五歳上の従兄からのお下がりです。僕は昔から洋服選びが非常に苦手なので、すべて従兄が着なくなったものを回してもらってるんです。――あ、この眼鏡もなんですよ」
お下がり! 間違いなくその従兄も洋服選びが苦手だぞ! それに……。
「え? なんだって、眼鏡? 眼鏡までお下がり? どんだけお下がり貰いまくってんだよ!」
衝撃が大きかったために、つい、声を荒げてしまった。
ついでに、小次郎のボサ毛に隠れた額にぺしっとチョップをくれてやる。
「あっ、痛い! あのっ、い、いけませんでしたか?」
那津はがっくり脱力する。
国立大学生で飛びぬけて頭がいいはずなのに、なぜそんなこともわからないんだ、こいつは。
「はあ……いや……。あのなあ、つーか、そもそも眼鏡は度が合わないと使えねーだろ。フレームだけならわかるけど」
「えっと……。最初は合わなくて、よく見えなかったんですけど、僕ちょうど眼鏡を壊してしまったので、そのまま使うことにしたんです。そしたらそのうち馴染んできて……」
それは単に視力が落ちたのでは……。
おっとり話す小次郎を見ていたら、那津はそれ以上言う気が失せてしまった。
こいつは本当に二ツ橋大の学生なのか。あのとき見せてもらった学生証は偽物だったりするんじゃ……。
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