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ベタな男 6
那津は、不意にムラムラしてその目を直に見たくなった。
手を伸ばし、勝手にひょいと外してみる。
「わっ! な、何するんですか、いきなり!」
小次郎は相当驚いたのか、首まで真っ赤になっている。けれど――。
驚いたのは那津の方だ。
ビン底レンズでひと回り小さかった目は、精悍な印象の切れ長の目だった。
真っ黒な双眸は濡れたように艶やかで、目の周囲に縁どられたまつ毛は冗談のように濃く長く、瞬きするたび風が吹くようで――。
なんだかこの目を見て浮かんだ描写は、苦手な国語の文章問題がスラスラ解けたような錯覚を起こさせた。
――なんなの、こいつ。こいつってこんなに男前だったのか? そりゃ、鼻と口のパーツはそこそこ整ってるしバランスよく配置されてるなとは思ってたよ。思ってたけど……。
今度は手加減なしで、小次郎の額をバシッと音を立て叩いた。
「あうっ! 痛いです! 那津さん! あっ、眼鏡返してくださいよ!」
「お前、なんだその面(つら)は! ベタな少女漫画のヒロインかよ!」
小次郎は真っ赤な顔のまま、アワアワしながら眼鏡を取り返そうとする。
しかし、顔が整っているくせに、妙ちくりんな恰好とボサ毛のせいで、ほとんどコント状態だ。
「なにもったいないことしてんだよ、せっかくいい面構えのくせに隠すなんて、嫌味か! もう眼鏡かけるのは禁止だ。俺が許さん」
「ええ~~、だってそれがないと僕、何にも見えなくて歩けないですよー」
「そんなの、俺が手を引いてやるよ」
「え…………」
黙り込んだ小次郎の顔は、さらに赤みを増したように見える。
それを見た那津の方までソワソワしてしまった。
「じょ、冗談だよ! 冗談! 妙な間をあけるなよ! ……とりあえず、買い物中はかけてもいいとして。確か店があったはずだから、最後にコンタクトレンズ見に行こうぜ」
「は、はい!」
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