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ベタな男 9
――本当に、眼鏡一つでなんでこんなに変わるんだよ……。
基本的に精悍な顔立ちだけど、色白だからなのか、どこか中世的な魅力も垣間見える。
そして何より、目が……。
こいつの目がなんというか、動くたびに、その視線が那津を捉えるたびに、首の後ろが粟立つ気がする。
上手く説明できないが、艶っぽい? 艶めかしい? ……あ、意味は一緒か。
「那津さん、そろそろ行きますか」
「あー、うん、そうだな」
小次郎が眼鏡をかけた途端、その艶めかしさは、消えた。
小次郎の素顔は、ビン底眼鏡で隠れているのに、なんとなく顔を直視できなくて、那津はどんどん先を歩く。
「よし、次はバッグだ」
「あ、那津さん、待ってくださいよ~」
「モタモタすんな」
メンズのバッグも多く扱っている専門店へ入り、いずれは未来の彼女とのデートにも使えるであろう高級感のあるレザーのボディバッグ、ショルダーバッグを購入する。
そして、通学用にいくつが欲しいという小次郎の要望を聞き、最初に入ったジーンスショップで、キャンパス地の大きめのリュックやトートバッグを購入した。
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