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ベタな男 10

荷物が山のようになってしまい持ち帰るのは無理なので、宅配で送ることにした。 小次郎は鼻歌まじりで伝票に住所をなどを記入している。那津は横目でちらりと小次郎の様子をうかがった。 首から下はほぼ完璧だ。 相変わらず頭はボサボサで変な眼鏡をかけているが、他人が見たら、わざとそんな感じにセットしていると勘違いするかもしれない。 ビン底眼鏡も、奇抜な新しいデザインに見えたり……。 いや、眼鏡に関してはそれはないな。 俺に天才的なスタイリストの才能があるのか、はたまた小次郎の素材が良すぎるのか……。 「那津さん、次はコンタクトですか」 「いや、先に美容院行こうぜ」 「あっ、僕、美容院て初めてです~」 「マジか……」 ♢♢♢ モール内の美容院は規模も大きかった。 白とこげ茶を基調としたインテリアは洗練された雰囲気だし、天井や壁の間接照明が落ち着いた空気を作っている。 二人が案内されて座ったソファーは、ホテルのラウンジのようだった。 しかし、さすが都下のショッピングモールだ。鏡の前には年配のご老人や庶民的な中年のご婦人もちらほら座っている。 「素敵な美容院ですね~」 小次郎は、田舎から出てきたおのぼりさん状態で店内のあちこちに視線を飛ばしている。 落ち着かないのか、さっきから足をもじもじさせているし。 「小次郎、お前せっかくカッコよくなったんだから堂々としてろよ」 「えっ、ぼ、僕、カッコいいですか? 那津さんから見て」 グルンと音がしそうなほど勢いよくこちらを向き、顔をのぞき込まれる。 眼鏡の奥の小次郎の目と素顔の艶めかしい目が一瞬シンクロして、ドキッとした。 目前の小次郎は「もじもじしてるけどワクワクしちゃってる田舎の青年」感バリバリなのに、なぜかあの目に見られているような、変な感覚がまとわりつく。

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