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ベタな男 11

――なんなんだよ、さっきから。……ひょっとしてギャップにやられてんのか? 確かに、那津は「ギャップ」に弱いところがある。 一見儚げでおっとりした女の子が、実は勝気な性格だったとか、一見派手なギャルなのに、中身は純情だとか。意外な部分を見せられたりすると、あっさり気持ちを持っていかれたりする。 だけど、こいつは男だ。だから、ギャップを感じても関係ない。 ――はずなのに。 ――あれか? 最初に「一目惚れ」とか言われたからか? 自分の中で勝手にその単語に反応してしまい、那津は気持ちを切り替えるべく、適当な話を小次郎に振った。 「えっと……お前はずっと床屋で切ってんの?」 小次郎は、はい、と言いながら自分の跳ねた毛先をつまむ。 「中学までは、近所の床屋に世話になってましたけど、その店のご主人が高齢で店をたたんだ後は、自分で切ってました」 客はこっちなのに、「世話になった」という表現が、こいつらしいなあと思う。 「自分で? 丸刈りにするならともかく、切るのは難しいだろ、左右のバランスとか」 「ええ、最初は上手く切れなくて切り過ぎたり、それこそ左右ガタガタでしたけど、そのうち慣れましたよ。夏は毎年丸刈りにして、あとは適当に伸ばしてちょこちょこハサミを入れてました。僕、中高は男子校で校則が緩かったので、ずっとこんな感じです。従兄には会うたび髪型が変だと指摘されますけどね」 えへへと恥ずかしそうに笑うと、小次郎は自分の頭を指差した。 その従兄の意見はどうでもいいのだが、那津はつくづく、自分と小次郎の世界観の違いを実感する。 小次郎が自分で適当に髪をカットしていた頃、那津は人気の美容院で、カタログ片手にあれこれ注文をつけていた。 「那津さんはやっぱり美容院ですよね。そのヘアスタイル、とっても素敵です。色も明るくて似合ってて、いつ見てもカッコいいなあって思ってたんですよ」

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