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ベタな男 12
女子に言われたことは多々あるけれど、面と向かって、しかも男に「素敵」なんて言われたのは初めてだ。
「そ、そりゃどーも。……でもこの色、天然で地毛なんだよ。中学の頃はこの色が原因で、先公や上級生に目えつけられてたし」
「えっ、生まれたままの色なんですか? すごい、だからそんなに綺麗なんですね!」
「お、お前な……」
素敵だの綺麗だの、こいつの頭の中身こそが天然だ。
腹の中で悪態をついてみるものの、那津の顔にじわじわと熱が集まってくる。
多分こいつは、美少女フィギュアかなんかで埋め尽くされた部屋に住むオタクで、ロリ系のキャラクターに向かって「素敵」とか「綺麗」とか話しかけているに違いない。
そうだ、そうに決まっている。
どうも小次郎と話していると、たびたびペースを乱される気がする。
まあ、それが満更でもないと感じている自分も、かなりヤバいのかもしれないけれど。
そして不意に、何かが引っかかった。
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