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ギャップ王子 5

那津はあわてて、ペコリと頭を下げた。 「あ、あのっ、初めまして、青海です。すいません、突然おじゃましまして……」 かしこまった挨拶なんてしたことがないから、舌を噛みそうになる。 人のよさそうな顔立ちのタナカは、那津を見てやや驚いたようだが、みるみる笑顔になった。 「あらあら、お友達でしたのね。ようこそ、お越しくださいました。さあどうぞ、中へお入りください」 ――いい人だ。 小次郎の『師匠』なんて言葉にもポカンとせず、さり気なくスルーしてくれるところや、真面目そうな小次郎と明らかに毛色の違う、一見派手でチャラそうに見られてしまう那津に対しても、親切な対応をしてくれるところに、プロ意識を感じた。 笑顔が優しそうで素敵で、心なしか例の女優に似ている気がする。 ♢ 那津は、究極の幸福の中に、どっぷり浸かっていた。 両腕と膝の上に乗せた、ふわふわで可愛らしい猫たちが、その体を那津にすり寄せてくる。 つぶらな瞳、滑らかでビロードのような毛並み。 さぞ高級なキャットフード与えられているのに違いない。那津は毛だらけになるのもお構いなしで、猫に頬ずりした。 「かっわいいなあ~~お前たち。なんでそんなにラブリーなんだよ~。ん~? なになに、撫でてほしいの? よしよしいい子だ、ほーらほら~」 初めて訪れた人様の邸宅だというのに、那津はデロデロにくつろいでいた。好きなように猫たちと戯れ、まさに、至福のど真ん中にいた。 そんな那津に放っとかれている小次郎は、さっきからスマホをこっちへ向けて腰を落とし、「へっぴり腰」の体勢でフリーズしている。

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