36 / 132

ギャップ王子 12

互いに言いたいことを言い合っている感じだが、小夜香が小次郎に甘えているように見えるのは気のせいだろうか。 つい呆然と二人の様子を見ている那津に、小次郎は申し訳なさそうに眉を寄せた。 ――ほらな。俺には気を使ってる…… 那津は少しいじけた気持ちになってしまう。 「騒がしくてすみません。那津さん、紹介します。従姉(いとこ)の小夜香です」 ――あ、なんだ、従姉なのか ホッとした。話に聞いていた従兄と違い、こっちはセンスがいいようだ。那津は背筋を伸ばした。 小次郎の身内に、できれば悪い印象は与えたく ない。 「あの、初めまして。俺、青海那津です」 小夜香は、一瞬値踏みするような視線を那津に走らせたが、すぐ笑顔になった。 小次郎の従姉なんだから、育ちがいいに決まってる。 しかしすべての仕草が上品なのに、彼女の視線に敵意が含まれてるような気がするのは、気のせいだろうか。 那津はいまだかつて、女性からこんな種類の視線を向けられたことがなかった。 「こんにちは、小次郎の従姉の小夜香です。――とっても珍しいわ、この人がお友達を家に呼ぶなんて。えっと、大学のお友達?」 「いや、違います! 俺は、なんというか」 ――あれ? 俺と小次郎の関係って、他人にはどう説明すればいいんだ? 『師匠』なんてこいつが勝手に言ってることだし…… 「那津さんは、僕の一番大切な人だ」 「「えっ!?」」 驚いて思わず聞き返してしまい、小夜香と声がダブる。 俺が驚くならともかく、なんで小夜香さんがこんなに驚くんだ?  那津がひっそり考えていると、小次郎がすっと傍らに立ち、那津の背中に手を添えた。 その顔を見上げると、びっくりするほど優しい目で見下ろされた。 不意打ちの視線にドキッとして、胸の辺りを掴む。

ともだちにシェアしよう!