38 / 132

女友達と男友達 1

「あの、どうしてもダメですか……?」 目の前の女の子は、大きな目をウルウルさせて、那津を上目遣いに見た。 「俺さ、校内では彼女を作らない主義なんだ。だから、ごめんね」 「どうして……どうして同じ学校じゃダメなんですか。私が他校の生徒だったら、彼女にしてくれるんですか?」 「そうだね」 「そんなのひどい、納得できない……」 彼女はうつむいて、両手をギュッと握りしめた。 那津は、あえて素っ気ない態度を見せた。 「だって……同じ学校で付き合ったら、別れた後、気まずいでしょ」 我ながら、誰かに聞かれたら、猛バッシングを受けそうなセリフだ。 けれどまだ諦めきれないのか、短い制服のスカートから伸びた白い脚は、動く気配がない。 どうしようかと思案していると、背後から二人分の足音が近づいてきた。 「ちょっと~なっちん、まだぁー? いつまで待たせんのよ~」 「なっちん、早く行かないとお店が混んできちゃうよ」 背の高い影と、かなり低い影。 「イチカ、ハナ……」 那津がいつもつるんでいる、同級生のハナとイチカだ。 二人は同じクラスなのだが、三年に進級した時、那津だけクラスが離れてしまっていた。 だから、昼休みはいつも二人のところに行って、ランチしている。 今日は下校後に三人で、最近オープンしたカフェへ行く約束をしていたのだ。 その店はケーキの種類が豊富な上に、セットの値段は学生の財布に優しい。スイーツ好きの那津は楽しみにしていたのだ。 「ああ、ごめん。もう話は終わったから。……じゃあね。俺、もう行かなくちゃ」 言いながら、那津は辛抱強くたたずむ女の子に視線を向けた。彼女の口が薄く開き、でも諦めたようにキュッと閉じられる。 「さ、行こ行こ、なっちん」 ハナとイチカに両腕を取られながら、那津は彼女に背を向けて歩き出した。

ともだちにシェアしよう!