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女友達と男友達 1
「あの、どうしてもダメですか……?」
目の前の女の子は、大きな目をウルウルさせて、那津を上目遣いに見た。
「俺さ、校内では彼女を作らない主義なんだ。だから、ごめんね」
「どうして……どうして同じ学校じゃダメなんですか。私が他校の生徒だったら、彼女にしてくれるんですか?」
「そうだね」
「そんなのひどい、納得できない……」
彼女はうつむいて、両手をギュッと握りしめた。
那津は、あえて素っ気ない態度を見せた。
「だって……同じ学校で付き合ったら、別れた後、気まずいでしょ」
我ながら、誰かに聞かれたら、猛バッシングを受けそうなセリフだ。
けれどまだ諦めきれないのか、短い制服のスカートから伸びた白い脚は、動く気配がない。
どうしようかと思案していると、背後から二人分の足音が近づいてきた。
「ちょっと~なっちん、まだぁー? いつまで待たせんのよ~」
「なっちん、早く行かないとお店が混んできちゃうよ」
背の高い影と、かなり低い影。
「イチカ、ハナ……」
那津がいつもつるんでいる、同級生のハナとイチカだ。
二人は同じクラスなのだが、三年に進級した時、那津だけクラスが離れてしまっていた。
だから、昼休みはいつも二人のところに行って、ランチしている。
今日は下校後に三人で、最近オープンしたカフェへ行く約束をしていたのだ。
その店はケーキの種類が豊富な上に、セットの値段は学生の財布に優しい。スイーツ好きの那津は楽しみにしていたのだ。
「ああ、ごめん。もう話は終わったから。……じゃあね。俺、もう行かなくちゃ」
言いながら、那津は辛抱強くたたずむ女の子に視線を向けた。彼女の口が薄く開き、でも諦めたようにキュッと閉じられる。
「さ、行こ行こ、なっちん」
ハナとイチカに両腕を取られながら、那津は彼女に背を向けて歩き出した。
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