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女友達と男友達 2
「さっきなっちんがフッた女の子、一年よ。清純派で可愛いって評判の」
ベリータルトにフォークを突き刺しながら、イチカがけだるそうに言った。
一方那津は、抹茶ロールの綺麗な渦巻き模様を眺めながら、口先だけで答える。
「へえ……」
ハナはというと、苺ミルフィーユと格闘していた。
フォークを刺せば層が崩れるし、一口大にしようにも上手く切れない。しばらくしてから控えていたナイフの存在に気づき、黙々と層を切り離すのに集中し始めた。
「さすがイチカ、詳しいなあ」
「女子の情報網なめんじゃないわよ。明日には、あの子がなっちんにフられた話題が校内中を回るわね」
「怖いなあ……」
だから嫌なのだ。
同じ学校の女子と付き合ったりしたら、ゴシップネタ好きの女子たちに監視されて、ネタにされるに決まっている。
それを知っているからこそ、那津は頑なに校内で彼女を作らないのだ。
「イチカの口が堅ければ、広まらないんじゃないの?」
ハナが小首を傾げて、おっとり正論を言う。イチカははっとした表情になり、那津にずいっと顔を近づけた。
「なっちん、カフェテリア日替わり定食一週間分と引き換えに、もれなくあたしの口が堅くなるわよ」
「いやべつに、いいです」
「あらそう」
メールの着信音がして反射的に画面を見ると、小次郎だった。
那津は頭で考えるより先に、タップして開く。週末の予定に対する返信だった。
「ちょっと、なっちん。やっぱり彼女できたんじゃないの」
「え?」
那津は、素早く小次郎への返信を打ってから、顔を上げた。
「その顔! いやあねえ、にやけちゃって。ねえ、ハナ」
「なっちん、嬉しそう」
「は? 彼女? 違うよ! ないない、だってこいつ男だし」
本当のことなので、那津は全力で否定するが、イチカはまだ疑いの目で睨んでいる。
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