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女友達と男友達 3

「嘘をおっしゃい! なっちんにそんな親しい男友達がいるわけないじゃないの。なんで隠すのよ!」 「イチカ、言い方がおばさんぽいよ。……なっちん、男子の友達できたの? よかったね」 「うん。ありがとう、ハナ」 イチカは座った目つきで、にっこり顔を見合わせる那津とハナを見ている。 「……あたしは騙されないわよ」 「いいよ、べつに信じてくれなくても」 「じゃあ、あたしにも会わせなさいよ」 「え……」 那津は一瞬答えにつまった。 那津の手腕で、小次郎は見た目だけはどこから見てもイケメンになった。元々は高学歴の大学生なわけだし、那津にとっては自慢の男友達といえる。 だから、友達のイチカに紹介するのは問題ない、はずだ。なのに……。 ――なんで俺は、一瞬迷ったんだろう 迷ったというより、否定的な感情が胸に沸き上がった気がした。イチカは面食いで、大のイケメン好きだ。だから小次郎に会えばきっと……。 ――なんなんだ? べつに、イチカが小次郎を好きになっても那津には関係ないはずだ。小次郎は勝手に師匠とか言ってるけど、那津と小次郎は仲の良い友人の関係だと思う。 べつに、イチカに小次郎を取られるわけじゃない。 ――取られるって……。 自分の思考に驚いた。自分はどうやら、小学校以来の親しい男友達に、我知らず執着しているらしい。 イチカが、大きく息を吐いた。 「ふん、まあなっちんのことだから、どうせ長続きしないでしょうけどね、目に浮かぶようだわ。前回みたいに一か月もつのかしらねえ」 サクッと控えめな音を立てて、那津の胸に何かが刺さった。 「ひ、ひでえ……」 「イチカ、言い過ぎだよ。なっちんがかわいそう」 那津は空になったケーキ皿の横に、コテンと額を乗せた。ハナの小さい手が、よしよし、と那津の亜麻色の髪を撫でてくる。 ――小次郎なら、絶対、俺が傷つくようなことは言わないよな イチカの毒舌には慣れているはずだったけど、小次郎の丁寧な話し方や、那津へ向けるやわらかな眼差しのせいで、ガードが緩くなったんだろうか。 「あいつとは、長く付き合っていきたいんだ……」 那津は、二人に聞き取れないほど小さく、呟いた。

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