42 / 132
友情と感情のはざま 2
座るときは、軽く脚を組むよう指示したから、長い脚を組んで座っている。
熱心にメモっている姿は様になっていて、まさかこんなイケメンが、元は驚愕のダサ男だったとは、誰も信じないだろう。
美容院で整えてもらった眉は、切れ長の眼と相性がいい。
バランスよく配置された鼻と口もそうだけど、瞳も髪も真っ黒だから、いっそう白い肌が上品に見えるのかもしれない。
「お前さ、そうやって黙って真剣な顔してると、かなりイケてるぞ」
「えっ、本当ですか?」
「まじで。自信持てよ。俺が保証する」
本当に、小次郎は変わった。那津もときどき見とれてしまうほどに。
生まれつき茶髪に小麦色の肌の那津だが、正反対の小次郎が羨ましく感じてしまう。
しかし、決して悔しいわけではなかった。小次郎に出会う前の那津なら、きっと負けたくなくて張り合ってしまったかもしれないけれど。
小次郎は照れくさいのか、ほんのり頬を染めている。
「那津さんにそう言っていただけると……心底嬉しいです」
不意に真っ直ぐ真剣な面持ちで見つめられ、那津の心臓が跳ねた。
それを誤魔化すため、無理やり笑顔をつくる。――イケメンの威力はすごいと、実感した瞬間だった。
小次郎は那津の心情を知ってか知らずか、まだじっと見つめてくる。那津は、なんだか落ち着かない心地で、さり気なく店内を見回した。
那津と小次郎がテラス席についてからまだ数分なのに、店内の若い女性率が増加した気がする。気づけば、店の前を通りがかった数人の女性が小次郎をチラ見しているし。
小次郎と落ち合ってから、ずっとこんな調子なのだ。
那津は、自分の容姿にそれなりに自信があるのだが、小次郎と一緒だとどうやら霞んでしまうらしい。
当然それは、嬉しくもあり誇らしいことだった。
こいつは俺が改造したんだぞ、どうだ、いい男だろと、自慢したい気分……なのだが、同時に那津の胸の奥底にもやもやした複雑な感情が漂っていた。
小次郎の方が、女の子の視線を集めているのがもしかして面白くないのか? 自慢したい気持ちが確かにあるのに、自分でも気づかないうちに嫉妬しているんだろうか。
ともだちにシェアしよう!