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友情と感情のはざま 4
店を出て、賑やかな通りを二人、肩を並べて歩く。
小次郎と出会ってまだ一か月足らずなのに、彼が自分の隣にいるのは自然なことに感じる。不思議だけど。
「なあ、小次郎、今度合コンに参加してみないか」
「合コン、ですか」
小次郎の表情に驚きの色が浮かんでいたから、もしや合コンの知識がないのかと説明しようとするが、それは知っているとのことだった。
「まあ、大学生だから知ってるか」
「そうですね……」
那津は小次郎の表情が気になったが、話を続けた。
「今のお前なら、もうどこに出しても恥ずかしくないくらいにイケてる。きっと、黙ってても可愛い女の子が寄ってくるだろうけど、中身で勝負して実力を試すには、手っ取り早いと思うんだ」
「勝負……。中身で、ですか」
小次郎は、なぜか浮かない表情だ。
「あれ、気が乗らないか」
「あ、いえ……」
那津としては、無理強いするつもりはない。けれど、ふと、素朴な疑問が浮かんでくる。
そもそも、なぜ小次郎は見ず知らずの那津に頭を下げてまで、カッコいい男になりたいと思ったのか。
一見、チャラく見えて遊んでいそうな那津に声をかけたのだから、女の子にモテたいとか、彼女が欲しいとか、そういった理由があるはずだ。
「お前もしかして、好きな子でもいるの?」
同時に、小次郎の実家で会った従姉の小夜香の顔が浮かんだ。小次郎は目線を落とし、緩く息を吐いた。
「確かに、最近は学校で女性に話しかけられる機会が増えましたけど……僕に好きな女性は、いません」
そりゃそうだろう。街でこんなに女の子たちの視線を集めている小次郎だ。大学構内なら街中よりも声をかけやすいだろうし、なおさら、近づくチャンスをうかがう女子が急増中に違いない。
「あの、那津さんは彼女いないんですよね」
「俺? ……今はいないよ。悪かったな」
小次郎は、無言で首を振った。
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