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友情と感情のはざま 6

エキゾチックでアジアンテイストなインテリアは、那津の好みど真ん中だ。 店内は賑やかな気配に満ちている。団体客と少人数客それぞれがくつろげる様、上手に空間が利用されているようだ。 ――と、ついでにもらったパンフレットに記載されている。 いたるところに配置されたパーテーションは圧迫感のないデザインで、なるほど確かに、客同士のプライバシーをさり気なく守っているようだ。 「小次郎、ちゃんと見ておけよ。デートにつかえそうだからさ、この店」 軽く肩を叩いてやると、珍しく沈黙していた小次郎は、はっとしたように顔を上げた。 「那津さんは、この店が気に入ったんですね」 「うん。俺さ、こんな感じのインテリア好きなんだ。いつか一人暮らししたら、こんな風にしたいんだよね」 「小次郎はおもむろにポケットからメモ帳を取り出すと、「アジア系インテリアがお好み……」と、言いながらペンを動かした。 那津はパンフレットで小次郎の頭をぱしりと叩いた。 「俺の情報はいいんだよ! それに、アジア系じゃなくて、アジアンテイストだ」 あじあんていすと……。とぶつぶつ言いながらペンを走らせる小次郎を放っといて、那津は店の奥へとどんどん進んだ。 「青海くん?」 不意に名前を呼ばれて振り向くと、通路には那津の「今もっとも会いたくない人物」が立っていた。 互いの自宅は離れているから、もう会わずにすむだろうと思っていたのに。 約二か月前に那津を振った、可籐絢華(かとうあやか)だった。 つい先日、自称絢華の元カレに襲われたばかりだ。どちらも小次郎に目撃されるなんて、やっぱり自分は絢華に振られてからというもの、とことんついていないような気がする。 「元気だった? あら……」 絢華は、那津の後ろに立つ小次郎を一目見ると、途端に媚びた表情になった。 ルックスたけだと言い放って那津を振ったくせに、相変わらず見目の好い男には弱いのだろう。 「行こう、小次郎」 「那津さん?」 状況を理解していない小次郎の腕を引っ張り、出口へ向かおうと方向転換した。 「私これから、陸城高校の人たちと食事会なの。那津くんは……相変わらずのようね」

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