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友情と感情のはざま 7

人を小馬鹿にしたような、カチンとくる言い方だ。態度も目つきも、すべて上から。――最悪だ。絢華は、那津が過去に付き合った女の子の中で、性格の悪さはナンバーワンだ。 ――食事会って。……ただの合コンだろ 那津は、小次郎の腕をつかんだまま、絢華に向き直る。陸城高校は、偏差値が高い難関高校だから、「学力重視」に宗旨替えした証拠だ。 「よかったな、希望が叶って。じゃ、俺たちは用あるから、これで」 絢華は、まだ那津を解放する気がないのか、セミロングの髪をかき上げしゃべり続ける。 「やっぱり、付き合うなら学歴は重要だってよくわかったわ。だって、ルックスだけよくても、中身が空っぽじゃ将来に何の期待も持てないもの」 「は……?」 小次郎の前で侮辱され、那津の頭にカッと血がのぼる。けれど、悔しいが紛れもない事実でもある。 歯を食いしばり、思わずうつむいた那津の肩に、小次郎の手のひらがそっとやさしく置かれた。 「失礼なことを言うのはやめなさい」 小次郎は、絢華から那津の身体をかばうように一歩前に出ると、真っ直ぐ女の前に立った。 「あなたのように、相手を傷つけるようなことを平気で口にする人間に、那津さんの良さがわかるはずがない。那津さんを侮辱するのは、僕が許さない!」 すぐ目の前の、小次郎の背中から発せられる憤りが、ビリビリ伝わってくる。 那津には温厚な一面しか見せない、小次郎の激しい部分を再び目の当たりにする。 前回は、従姉の小夜香に対して普段からは想像もつかないような、攻撃的な態度だった。けれど今は、那津のことを思って、怒りをあらわにしている。 ――俺のために、怒ってくれてるんだ 自分でも、どうかと思うほど嬉しかった。小次郎のシャツを、無意識につかんだ手が震える。 さすがに気の強い絢華も、冷淡に言い放った長身の男の迫力に、気圧されているらしい。顔が整っているだけに、並みの女の子なら泣き出しているかもしれない。 しかし絢華は、やや後ずさりながらも言った。 「な、なによ、あなただって、所詮、ルックスだけの男のくせに」

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