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友情の意味 1
「あの、絢華さんのこと、話したくないならいいんです。今後も変わらず、僕が那津さんを守ればいいだけのことですから」
無理に笑顔を作ったような小次郎の顔を見て、胸のあたりがずきりと痛んだ。
しかし、真実をすべて話してしまったら、小次郎の、那津に対する評価は変わるだろうし、『師匠』も解任になるかもしれない。
そう想像してみただけで、鼻の奥がツンとしそうになる。
歴代の彼女たちとの関係は実にドライで、別れたらそれで終わり、気持ちを引きずることもなかった。それは相手も同じで、例えば街でばったり出くわしても、互いに軽く挨拶できる。
けれど、小次郎とはこれからもずっと、こんな風に会いたいと思っている。
――そうだ、たとえ小次郎に彼女ができたとしても。
不意に、那津の思考がぴたりと停止した。急速に、脳みそが疲労感を訴える。
「那津さん?」
ひょいと顔をのぞき込まれ、びくっと肩が揺れる。小次郎の整った、精悍にも見える顔は、那津の鼻先からほんの数センチ先にある。
長いまつ毛に縁取られた真っ黒な瞳に、自分の間抜け面が映り込んでいた。
「ごめんなさい、那津さん。僕が変な事聞いたせいですね。……踏み込みすぎました、反省します」
「あっ……いや、そういうわけじゃなくて」
むしろ踏み込んで欲しいような気持にもなりつつ、なんだか自分でもよくわからない感情のスイッチが、入り乱れていた。
「僕は、あの女性が、那津さんのよさを理解していないのが、悔しかったんです。……でも」
小次郎は那津と視線を合わせると、優しく微笑んだ。
「あの人が知らない那津さんを、僕は知っているし、これからも沢山知りたいと思いました」
「お前は、俺のこと過大評価しすぎなんだよ。……俺なんか、大学行ける学力ない馬鹿だし、どこもいいところなんかないよ。――俺だって、お前と一緒にいるとすげえ楽しいけど、俺といることで、お前に迷惑をかけるのだけは、嫌なんだ……」
言いたいことが上手くまとまらなくて、ついネガティブ発言をしてしまう。
なぜだか小次郎の顔を見ていられなくて、うつむいた。
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