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友情の意味 3
那津と小次郎が話し込んでいたのは、那津の自宅からほど近い公園だった。
いつのまにか、陽はとっぷり暮れている。
今までは、明るいうちに解散していたから、今回は特に長い時間を共有していた気がする。
――元カノとニアミスだったし、疲れてヘトヘトだけど……楽しい一日だったな。
「那津さん」
「ん?」
「今日は、今までで一番長く那津さんと過ごせました。……とっても楽しい一日をありがとうございました」
そんな風に言われて、小次郎も同じ気持ちなのだと気付き、ドキリとする。もうすぐ楽しかった時間も終わるから淋しいのに、なんだか足元はフワフワしてくる。
視線を合わせると、小次郎は眩しいものを見るように那津を見つめていた。
そしてやや表情を硬くすると、那津の背後に視線を動かす。暗くなった裏通りに向かって、目を眇めている。
「おかげですっかり陽が落ちてしまいましたね。那津さんの家まで送ります」
「え、いいよ。女子じゃあるまいし」
小次郎は真っ黒な双眸で、那津をじっと見つめた。
「送らせてください。でないと、僕が心配で帰れませんから」
「小次郎……」
小次郎に初めて逢った日に、「自称絢華の元カレ」に襲われた。その事を思い出しているのだろう。
助けられたあの日、ボディガードになります! と意気揚々だった小次郎に、自宅まで送ってもらった。
女子じゃあるまいし恥ずかしいけれど、那津も酷く怖い思いをしたので、彼の申し出を素直に受け入れた。
けれど、送ってもらったのは最初のその日だけだった。その後は小次郎と会っても早い時間帯に解散するようにしていたし、意識して人通りの多い道を通って帰宅していた。
平日は、小次郎が毎朝「明るい時間帯
に帰宅してくださいね」という過保護なメールを寄こすから、下校時間も意識して早くしていたし、ハナとイチカに「もう帰るの~?」とか言われながら帰宅していた。
本当に、那津にしては珍しく規則正しく帰宅時間を守っていたのだ。
女子扱いされてるようで、面白くないような気がしたけれど、もう少し小次郎と一緒にいたいと感じていたから、素直に送ってもらうことにした。
心持ちゆっくり歩いて十二分、あっという間に那津の自宅へ到着した。
「那津さんのご自宅まで来たのは、二回目です」
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