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友情の意味 4

なぜか、嬉しそうに家を見上げる小次郎の横顔が、月明かりに照らされていた。 那津は、男の自分が送り届けてもらったことが急に恥ずかしくなり、「べつに、普通の一軒家だろ」と、ぶっきらぼうに呟いた。 「お前の実家と比べたら犬小屋だし」という自虐的なセリフは、辛うじて飲み込んだが、生きる世界が違う事実は、ずっと頭のすみっこにある。 「那津さんの部屋は……二階ですか」 「え?……ああ、一番右の窓」 「右の窓……あそこが、那津さんの」 小次郎は那津の部屋の窓に視線を向け、感慨深げに息を吐いた。 「なあ、お前のマンションは駅の反対側だろ。……五分くらいだっけ」 「はい。なので、那津さんの気の向いた時に呼んでいただければ、十五分くらいでこちらまで参上できますよ」 「いやべつに! 参上しなくていいから! ……でも、結構近所だったんだよな」 あんな、ビン底眼鏡をかけているインパクトの強いやつと道端ですれ違えば、二度と忘れないだろうから、過去にその機会は訪れなかったのだろう。 ……いや、そもそも俺は男に興味がないから、気づかなかった可能性もあるし、単に機会がなかっただけかもしれない。 けれど、小次郎は国立大学の学生で、本来なら那津などは知り合うことすら難しい人種だ。 そう考えたら、隣に立つ小次郎が急に遠くに感じられた。 思わず、小次郎のバッグを強くつかむ。 「俺も、小次郎のことがもっと知りたい」 驚いた表情を見せた小次郎に、とっさに「ほら、俺だって弟子のことを知る権利あるだろ」と言い換えた。 ただ純粋に、小次郎のことを知りたくなっただけなのに、ツンな態度しかとれない自分がもどかしかった。 「――嬉しいです。僕も、いずれ那津さんに知って欲しいことがありますから」 「え、なんだよ、それ」 今すぐに知りたい衝動に駆られる。 「今は、だめです。いずれ……でお願いします」 「いつ来るんだよ、そのいずれってのは」

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