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障害? 2

「あれえ? なんか校門の前、すごい人だかりだよ」 「ほんとだ、なんだろ」 二人が交互に言う。確かに通常よりもやけに生徒たちが集まっていた。 皆、校門の手前でワラワラと立ち止まっている。 「なにやってんだよこいつら。さっさと進めばいいのに」 イチカとハナを両腕にくっつけたまま、那津は紺色の人垣に近づいた。 その隙間から赤い何かがキラリと光る。 ど派手な、赤いスポーツカーだった。 そのボディに寄りかかるようにして、若い女が立っていた。 身体のラインを強調した、黒いサテンのワンピースに濃いサングラス。 足元はスネーク柄のピンヒール。 ストレートロングの髪をかき上げる仕草は様になっており、さらさらと風になびいている。 傍のイチカが、那津の腕をつついた。 「ベタすぎるけど、なかなかいい女じゃないの。やだ、もしかしてなっちんはあんなのがタイプだったりする?」 「はあ?」 「えっ!  タイプなの? なっちん」 ハナまで……。 「あのねえ、2人とも。タイプとか以前に、この状況おかしいでしょ。まるっきりコントじゃん。バブル全盛期のトレンディードラマの再現かよって感じで、ツッコミどころ多すぎ」 イチカが、やけにキリッとした表情を作って言った。 「ああ、バブル崩壊前、同じ苗字の人気女優がダブル主演したやつね。ママがDVD持ってたわ。それにしても、なっちんの口から「バブル」が出てくるとはね……。コジローの影響かしら」 「うるさいな。あいつと、そんな昔のドラマの話なんかしないよ」 小次郎が正真正銘男で、那津にとっては珍しく親しい男友達だということを、イチカはなかなか信じてくれなかった。 那津が、頑として会わせようとしなかったのもあるが、毎日話題にするうち、いつのまにか信じてくれたようである。 けれど、人見知りのハナはともかく、イチカには三日に一度は「会わせろ」と言われている。 初めのうちは、よくわからない感情が邪魔をして気が進まなかったけれど、今では二人に会わせるのも面白いかもしれないなと、思えるようになっていた。

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