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障害? 7
「でも、だって……従姉弟同志だろ」
「おあいにくさま。従姉弟は結婚できるのよ」
「え……」
そういえば、歴代の総理大臣に従姉を嫁さんにもらった人がいると、姉が話していたのをぼんやり思い出した。
テレビで仕入れたネタだろうけど。
――従姉弟は、結婚できる。
なんだろう。すごく嫌な感じだ。
訳もなくモヤモヤして気分が悪くて、なんで自分がそんな状態なのか考えようとしても、頭も疲れているから何も考えられない。
少しでも楽になりたくて、小次郎の全開の笑顔を思い浮かべるけれど、安心どころか胃の中を硬いもので押されているような圧迫を感じる。
那津は喘ぐように小さく深呼吸した。
「小次郎の実家に行った日、あんたも聞いてただろ、小次郎は俺を大事な人間だって言ってくれたよな。その俺を探るようなことして、怒らせてさ。あんたは何をどうしたいわけ? こんなことをあいつが知ったら、すごく悲しむだろうし、怒ると思うけど」
強気な姿勢を崩さなかった小夜香の表情に、一瞬動揺が走る。しかし、それはすぐに消えた。
「全部小次郎のためを思ってやってることだもの。怒られるのなんかいちいち気にしてられないわよ。それにね、私たちの婚約は、パパが決めたことだけど、叔母様……小次郎のお母様も大賛成だから、両家公認なの」
小夜香の目は真剣そのものだ。
「生まれる前から親公認って……なんだよそれ、あまりにも時代錯誤じゃん」
那津の中に、静かな衝撃が発生していた。
痛みも伴う奇妙な感覚だった。痛いのに、どこが痛みを感じているのかわからない。
親が決めた婚約なんてくだらないとか、馬鹿げてるとか、いろんな言葉が頭に浮かんでは消えた。
小夜香に怒りを向けた那津の方が、ダメージを受けていた。
「……二人の婚約と、俺の身辺調査、どう関係あんの?」
「あなたは小次郎の友人に相応しくないわ。那津くん、あなたの存在は、彼がこれから進む有望な進路の妨げになるのよ。だから、小次郎との友人関係を断って欲しいの」
頭が真っ白になった。
――友人関係を断つ? もう、小次郎に会うなってこと?
「小次郎の実家へ行ったなら、わかるでしょ。あなたと小次郎じゃ、住む世界が違うって」
そりゃ、そんなのはわかっている。嫌と言うほど。
「ね? 那津くん、わかってくれるわよね」
「――嫌だね」
「え?」
不安な気持ちを押し込めて、那津はキッと小夜香を睨んだ。
「そんなのは小次郎が決めることだろ。俺にとっても、あいつは大事な人間だし、これからも会うつもりだ。あんたに指図される覚えはないよ」
那津は助手席から飛び出した。
小夜香が何か叫んでいたけれど、振り向かずに一目散に走った。
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