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揺れる心 4
アイボリーのレースのワンピースに、白いリボンがアクセントの、白いジュートソールサンダルは、ハナの優しい雰囲気によく合っていた。
制服を脱ぐとより幼く見えるので、こうして二人で腕を組んで歩いていても、カップルではなく、仲の良い兄妹に見えるかもしれない。
大学の正門には、派手な手作りの看板があちこち掲げられていて、個性的な格好の人やコスプレの集団が、宣伝用のチラシを配っている。
高校の文化祭と比べると、桁外れの規模と賑やかさで圧倒される。
これなら、歩くだけでも楽しめそうだ。
「屋外ステージで何かやってるみたいだよ」
ハナが、いつもよりワンオクターブ高い声色で言った。
キャンパスに足を踏み入れてからずっと、ハナは興奮した様子で周囲にキョロキョロ視線を飛ばしながら歩いている。
那津がしっかり手を繋いでいないと、人の波にもって行かれそうだ。
「ハナ、そこに連れて行ってやるからちゃんと前見て。危ないから」
「えっ、行ってくれるの? なっちん」
「いいよ、面白そうだし」
途中でクレープの売り子に会い、二人で食べ歩きながらステージへ向かった。
ちょうど、弾き語り演奏が終わったところで、十分休憩の後、次のプログラムは「漫才」になっていた。
観やすい席にハナを誘導して二人で座り、那津はスマホをチェックするが、小次郎からのメールはなかった。
思わずため息が出て、隣に座るハナが首を傾げる。
那津は誤魔化すように、待ち受けにしている三匹の仔猫の写真をながめた。
小次郎の実家の猫たちだ。
「あ、そろそろ始まるよ」
「ハナって、お笑い好きだったっけ?」
「しー、静かに」
唇に人差し指を立て、ハナはステージに視線を向けた。那津も静かに観賞することにする。
内容は、漫才とコントが半々だった。
ビン底眼鏡をかけた、ふざけた風貌のやつが出てきた場面は大爆笑だった。
ハナもよく笑っていたし、那津も久しぶりに腹を抱えて笑った。
「もー、笑いすぎてお腹痛いよ!」
「俺も横っ腹が痛い……。なんかのど渇いたから、飲み物買ってくるよ。ハナはここで座って待ってて、あ、何がいい?」
「うんとね、緑茶がいい」
「オッケー」
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