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揺れる心 6

「ちょっとあなたたち、注目の的になってるわよ」 小次郎の背後からひょいと顔を出したのは、小夜香だった。 なんで、この女が一緒なんだよ……。 つい反射的に睨むと、誰かにシャツの裾を引っ張られる。 「ねえ、なっちん」 あ、しまった。 ハナのことをすっかり忘れていた。 ハナは、両手を握り合った那津と小次郎を交互に見ている。 やっとそこで、那津は自分たちの恥ずかしい状況を理解し、あわてて手を離した。 「ごめん、ハナ! えっと、ほら、いつも話してる小次郎だよ。こんなところで偶然会ったもんだから、びっくりしてたんだ。……あ、小次郎、紹介するよ。同じ学校で友達のハナだよ」 ハナを見て、一瞬戸惑った様子の小次郎だったが、すぐに笑顔に変わる。 「初めまして、ハナさん。那津さんの弟子の七嶋小次郎です」 表情は穏やかだが、なんだか声に硬さが感じられて、小次郎って人見知りだったのかとふと考える。 ハナは、「弟子?」と呟き、首を傾げている。 「コジロ―……なっちんがいつも楽しそうに話してる、コジロー?」 「え、那津さんが僕のことを……楽しそうに話されているんですか?」 一転、小次郎の表情はパアアッと光が差したように明るくなった。 「うん、あんまり楽しそうだからね、イチカは「男友達じゃなくてきっと新しい彼女だ」って言ってたくらい」 「ちょっと、ハナ!」 「そうですか……那津さんは僕のことをお友達に話してくださっているんですか……」 ――う……。 小次郎があまりにも嬉しそうだから、那津は恥ずかしいのをぐっと堪えることにした。 「初めまして、ハナです。なっちんがいつもお世話になってます」 ハナが小さい体を深々と折り曲げる。 「あ、こ、こちらこそ、那津さんにはいつも大変お世話になっております!」 身長百五十センチに満たないハナと、優に百八十センチを超える小次郎が向かい合ってお辞儀している図は、なんだか面白くてほのぼのしている。 小次郎もハナの無垢な可愛らしさにやられたのか、すっかり穏やかないつもの雰囲気になっている。さっき感じた硬さは、単に初対面だったからなのかもしれないと思った。

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