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揺れる心 7
「本当に仲が良くて、妬けるわね……」
含みを持たせた小夜香の言葉は、嫌でも先日の忠告を思い出させた。
――小次郎との友人関係を断って欲しいの
あのセリフを思い返し、背筋が冷たくなる。
小次郎との間に距離があるのが急に不安になり、その背中に近づき自分の肩をくっつけた。
「な、那津さん?」
慌てて振り向いた小次郎を、上目づかいに見上げる。
「なんだよ。……だめかよ」
「い、いえ! 何もだめじゃないです!」
再び顔を赤くしている小次郎が嫌がっていないのをいいことに、那津はもう少し大胆にぴったりとその背中に寄り添った。
「ほひぇっ……」
小次郎から変な声が聞こえたけれど、那津は自分が、なぜそんな妙な行動に出たのか不思議だった。
相手が彼女なら何ら問題ないが、相手は男の小次郎なのに。
周囲はたくさんの人が溢れ賑やかだ。皆、目的地へ向かって歩いているし、自分たちのことに忙しい。
那津たちのことを気にする人間は皆無だ。
小次郎の背中は心地よくて、温かかった。そして、ドキドキと心臓の鼓動まで感じられる。今、自分は小次郎と一緒にいるのだと実感して、ひどく安心できた。
「……何くっついてんのよ、離れなさいよ」
恨めしそうに呟く小夜香の服装は、先日那津の高校へ現れた時とはがらりと雰囲気が変わっていた。
淡いサーモンピンクのワンピースに、ヌードカラーパンプス。
ヘアスタイルはストレートではなく、ふんわりカールされていて、上品な女らしさが際立っている。(見た目だけだが)
「嫌だよ」
「私は認めないわよ」
視線がぶつかり合い、バチバチと火花が飛び散るのが見えた気がした。
たとえ見た目好みのタイプでも、やっぱり小夜香には敵意を感じてしまう。
「小夜香、その態度は那津さんに失礼だぞ」
那津にくっかれて、ドキドキふにゃふにゃだった小次郎の身体が、一瞬で硬くなる。
――ん?
「あーら、ごめんなさーい。じゃあ私はここで消えてあげるわよ。小次郎、後で必ず来なさいよ。待ってるから」
「……わかってるよ」
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