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すれ違う心 4
「何言ってるんですか、那津さんのことなんですから、心配するに決まってます」
「あ……う、うん。そっか」
過去に付き合った彼女たちや、ハナやイチカの心配をすることはあった。
けれど、人に心配されるのがこんなにも嬉しくて、くすぐったい気持ちになるなんて、知らなかった。
ただの男友達じゃない。
大切な親友とも違う。
今は、ぴったり当てはまるカテゴリーがない。
けれど、それを知ってしまうのが怖いような気もする。
確実に那津の中で、小次郎の存在が特別で大きなものだというのは実感していた。
そんな中、小夜香はショーの前に走り去った牛谷の後ろ姿をポカンと見ている。
「ねえ……ちょっと、なんなの? わけがわからないわ。あなたたち、牛谷君と知り合い? 彼に何をしたのよ。これから本番なのに。あの真面目な牛谷君がこんな行動に出るなんて、考えられないわ」
「いや、俺は別に……俺たちは」
那津が説明しようとしたとき、那津の体を支えてくれていた小次郎が、小夜香に向かって口を開いた。
「お前が仕組んだのか」
驚くほど冷ややかな口調だった。
「なんのことよ」
小次郎に睨まれ、小夜香は戸惑っている。誤魔化しているようには見えなかった。
「お前が、あの牛谷という男を使って、那津さんを襲わせたのか」
「小次郎!」
「なんですって? 何て事言うのよ! そんなことするわけないじゃない!」
那津から見た小夜香は、素で理解に苦しんでいるように見える。
「おい、いくらなんでもそれは……」
那津の声が届いていないのか、小次郎の周辺だけ温度が大幅に下がった気がした。
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