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すれ違う心 5

那津は、クールな小次郎を前にして、またうっかりときめいてしまいそうになった。 けれどさすがに、余計な事を考えている場合じゃなかった。 「私は知らないわ……本当よ。 だって、牛谷くんと個人的な付き合いなんかないもの」 「そこまでやるとは思わなかった。ーーお前を見損なったよ、小夜香」 冷たく言い捨てられ、小夜香は完全に顔色をなくしている。 「信じてよ……私は本当に」 小夜香に背を向け、小次郎は那津に向かい合う。 「この中なら大勢人がいるから安全です。那津さんは、ハナさんとここにいてください」 小夜香の様子が気になるが、那津は素直に頷いた。 「わかった。けど、お前は?」 「僕はあの男を捜して来ます」 「いや、捜すなんで無理だろ。キャンパスの外に出てるかもしんないじゃん」 「それでも、じっとしていられませんから。いいですか、とにかく那津さんは僕が戻るまでここから出ないでくださいね」 そう言うと、小次郎は足早に出口へ向かう。 「おい!」 外へ出た小次郎が、辺りを窺いながら走り去るのが見えた。 ーー俺のせいで、なんだか大変な事になっちゃったな……。 那津が茫然とそのまま突っ立っていると、誰かにシャツをくいっと引っ張られた。 「ーーハナ」 「小次郎、行っちゃったね」 まただ。 また、ハナの存在を忘れてしまっていた。 ハナだって大切な友達で、か弱い女の子だってのに。 ーーあいつのことばっかり、考えてるからだ。 思わず額に手を当てると、ハナが心配そうに顔を覗き込んでくる。 「なっちん、大丈夫?」 「ごめんねハナ。せっかく楽しんでたのに」 ハナは首を左右に振った。 「私は平気。でも、なっちんは平気じゃないでしょ。すごく淋しそうだよ」 「え……」 ハナの華奢な手が、那津の手をぎゅっと握ってくる。 「小次郎が帰ってくるまで、ここで待ってようよ」 「うん……そうだね」

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