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秘密 2
「ハナの好きな人は、ハナの気持ち知ってるの?」
「ううん、知らないと思う。気付かれないように頑張ってるから」
「そっか」
ハナと恋バナできる日が来るなんて思いもしなかったから、もう少し突っ込んで聞きたいような気もする。
けれど、さっきのハナの、いつもより大人っぽくてどことなく悲し気な横顔を思い出し、それ以上追及するのは控えた。
――って、おいおい、『恋バナ』って……。
脳内の自分の言葉にセルフツッコミしつつ、今まで恋の話に興味なさげだったハナが、誰かに切ない想いを寄せていることに、微かな感動を覚える。
年齢より幼く見えても、ちゃんと女の子なのだ。
可愛い妹の成長を垣間見たような気がして、ジンとする。
「ねえハナ、好きな人の事で悩んだり誰かに聞いて欲しい事があったら、話してよ。俺はいつでも、ハナの味方だから。イチカだって同じ事言うだろうけど」
「――そうだね。その時はなっちんに聞いてもらおうかな。……もちろんコジローのいない時に」
「ハナってば……」
那津に忘れられたことを根に持っているらしい。
ハナはくすっと口元で小さく笑った。
「冗談だよ。でも、コジローの方が真剣に聞いてくれそうだから、コジローに聞いてもらおうかなあ」
「確かに。あいつ超真面目だし、一緒に悩んでくれそうだよな」
「なっちん、そこは『ダメだ、あいつは俺のもんだから』とか言いなよ」
「なっ!……」
口をパクパクさせるしかない那津を見て、ハナはふふっとやわらかく微笑む。
普段からあまり表情を変えないハナのレアな笑顔を見て、いい恋をしているんだなと思える。
那津も、静かに励まされた気持ちになった。
――魂に性別はない。……か。
目で魂は確認できないけれど、とにかく自分の気持ちを自覚した以上、このまま突き進むしかない。
それがいったいどこまでなのか、どうなってしまうのか、那津自身にもわからないが、モヤモヤしていた時期よりは気分がすっきりしている。
――好きな人……か。俺は、小次郎が……。
急に恥ずかしくていたたまれなくなり、那津は話題を変えた。
「そういえばさ、超笑えたコントにビン底眼鏡のへんてこりんなヤツが出てきただろ、初めて逢った時、小次郎もあんな眼鏡かけてたんだよ。信じられないだろ」
「ホントに? 全然想像できないよ」
さすがのハナも驚いたようだった。
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