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秘密 5
まさか、那津が見つけてしまうとは。
けれど、以前襲われた場所もこの近くだったのだ。
あの時は後をつけられたと思い込んでいたが、この付近一帯が牛谷の生活圏内だという可能性もあったのに、迂闊すぎだ。
牛谷は食い入るように那津を見ている。
那津はその場に足を縫い止められたように動けなかった。
牛谷は周囲を伺うようにキョロキョロしながら、「あの男は、いないようだな……」と呟いた。
ーーどうしよう。小次郎に電話を……でも、こいつに逃げられるかもしれないし、かといって俺一人じゃ……。
小次郎と一緒にいる時は平気だったのに、こうして一人で対峙するのは相当キツい。
あの時の恐怖が蘇ってきて、今にも膝から崩れ落ちてしまいそうだ。
怖いのに視線が逸らせなくて、けど声も出せない。
そうこうしている間にも、牛谷が何か言いたげにこちらへ一歩踏み出した。
那津は反射的に一歩後ずさる。
そして、いつでも逃げられるようにできるだけ下肢に力を込めた。
「あの時は申し訳なかった!」
「……え?……」
身構えていた那津は拍子抜けした。
牛谷はつむじを見せつけるようにして深く頭を下げた。
「……あの後、絢華の友達に話を聞きに行ったんだ。そしたら、君の後に付き合った男ともすでに 別れていて……今は高学歴の男が集まる合コンに精を出してるらしい」
「ああ……」
まさに、その高学歴の男を物色しているところへ那津は鉢合わせたわけだが。
「先に話を聞きに行けばよかったんだが、あの頃は気持ちに余裕がなくて、君を責めることで自分を正当化したかったんだと思う」
まあ、その気持ちはわからなくもない。
「その……体は大丈夫かい? 君に酷いことをした俺が心配する資格はないだろうけど」
「……正直、今も怖いです」
「ご、ごめん! 申し訳ない!」
牛谷はピョンッと一歩後ろへ引っ込んだ。
「さ、さっき謝罪すればよかったんだが、あの背の高い男が恐ろしくて……気づいたら逃げ出してたんだ。本当にすまない」
「はい……」
本当に悪いと思ってるなら、さっさと立ち去ってほしいんだけど。
「あの男、本当に学校まで来るなんて……」
「え?」
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