95 / 132
想い 5
「わあ、ベルちゃんだったのか……超可愛いなあ」
「那津さんはベルがお気に入りでしたよね。いずれこの部屋に那津さんを招待するつもりでいたので、思いついたんです。……早めに作っておいてよかったです」
「これ…………俺のために?」
「はい。那津さんの喜ぶ顔が見たくて、作ってしまいました」
わしづかみにされたように、ギュッと胸が痛くなる。
たとえ友情だとしても小次郎の気持ちが嬉しくて、心臓周りの筋肉が収縮したように苦しくなった。
――ちゃんと話さないと……コイツの優しさに甘えてたら、俺はダメ人間のままだ。
そう決意した途端、喉が渇きを訴えた。
那津は温かいコーヒーをひと口飲む。
甘くてまろやかで、那津の好みぴったりの優しい味だ。
口に含むたび、小次郎の温かい想いが身体に流れ込んでくるような気がする。
同時に、勇気も湧いてくる。
小さくゆっくり、深呼吸した。
「……那津さん?」
那津は俯いたまま、口を開いた。
「あのさ……話の続き、聞いてくれ」
小次郎の強い視線を左頬に感じる。
「――はい。聞かせてください」
怖くて目は合わせられない。
もしも小次郎を失ってしまったら……という不安に駆られ、視線の先にある小次郎のシャツの袖をつかんだ。
ともだちにシェアしよう!