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想い 5

「わあ、ベルちゃんだったのか……超可愛いなあ」 「那津さんはベルがお気に入りでしたよね。いずれこの部屋に那津さんを招待するつもりでいたので、思いついたんです。……早めに作っておいてよかったです」 「これ…………俺のために?」 「はい。那津さんの喜ぶ顔が見たくて、作ってしまいました」 わしづかみにされたように、ギュッと胸が痛くなる。 たとえ友情だとしても小次郎の気持ちが嬉しくて、心臓周りの筋肉が収縮したように苦しくなった。 ――ちゃんと話さないと……コイツの優しさに甘えてたら、俺はダメ人間のままだ。 そう決意した途端、喉が渇きを訴えた。 那津は温かいコーヒーをひと口飲む。 甘くてまろやかで、那津の好みぴったりの優しい味だ。 口に含むたび、小次郎の温かい想いが身体に流れ込んでくるような気がする。 同時に、勇気も湧いてくる。 小さくゆっくり、深呼吸した。 「……那津さん?」 那津は俯いたまま、口を開いた。 「あのさ……話の続き、聞いてくれ」 小次郎の強い視線を左頬に感じる。 「――はい。聞かせてください」 怖くて目は合わせられない。 もしも小次郎を失ってしまったら……という不安に駆られ、視線の先にある小次郎のシャツの袖をつかんだ。

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