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想い 7
シャツの袖口をつかむ那津の手の上から、小次郎の手が覆いかぶさる。
そして小次郎は真剣な面持ちで、前のめりに那津を見つめた。
息がかかりそうなほどの距離で、真っ黒な双眸に食い入るように見つめられる。
心臓が顔面に移動したのかと思うほど、首から上が熱くなった。
「誤解しないでください! そんなのは悲しいです。僕が那津さんに興味がないなんて、そんなことあるわけがないですよ」
「だ、だって……」
「学校の偏差値とか学校名とか、そんな事は関係ないんです。僕にとっては何の意味もない……。那津さんにはハナさんやイチカさんのような素敵な友人がいて、学校での様子を沢山話してくれる。何より那津さんがとっても楽しそうだから、僕は嬉しいんです」
「うん……毎日楽しいけど」
「大切なのは、那津さんがどこの学校に通っているのか、ではなくて、どんな学校生活を送っているか、なんです。それが重要事項です」
「重要事項って……」
思わず、軽く噴き出した。
高校生活はもちろん楽しいけれど、今の那津にとって一番楽しいのは、小次郎と過ごす時間だったりもするのだが。
――半分はドキドキして困るけど……。
真剣な面持ちから一転、小次郎はにっこり微笑んだ。
「そもそも、僕から聞く必要はなかったんですけどね。那津さんの学校なら、初めから知ってましたから」
「――は?……え?」
そりゃ初めて逢った時、那津は制服を着ていたわけだが、デザインはよくある紺のブレザーに白シャツだから、一見制服を見ただけではどこの学校かわからない。
「お前……知ってたのか? 俺がどんだけバカかって」
「バカは余計です。――もちろん、知ってましたよ」
フフン、と満足げな様子で小次郎は胸を張る。
二ツ橋大学なのに、超頭いいくせに、那津が底辺高の生徒だと知っていながらこの男は、あんなに熱心に頭を下げたというのか。
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