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想い 11

「僕は……那津さんが大好きです」 ビクッと那津の肩が震えた。 「師匠や友達という意味じゃないですよ。もちろん、那津さんを師匠として尊敬していますけど、僕は……あなたの恋人になりたいんです」 ――恋人……好きな人って、ほんとに俺の事なんだ……。 「あの、那津さん、顔を上げてくれませんか……」 優しく囁かれ、首の後ろがザワッと粟立つ。バカみたいに嬉しくて、全身がゾクゾクしてくる。 ギュッと小次郎のシャツをつかんだ。 「那津さん。……あの、那津さんの心臓、すごくドキドキしてますね」 「う……うるさぃ……」 顔は熱いし、ありえないほど心臓が忙しなくて、まるで短距離を連続疾走したような状態だ。 「僕も那津さんと同じです。ほら……触ってみてください」 小次郎は那津の右手をひょいと取り、自分の左胸に当てる。 「うわ……すげ……」 一見落ち着いて見えるのに、小次郎の胸もドクドクと激しく鼓動を刻んでいる。 那津と同じか、あるいはそれ以上かもしれない。 「那津さん……那津さんの気持ちを教えてください……」 するりと拘束を解かれ、二人の間に一人分の隙間ができる。離れたくないのに。 改めてのぞき込まれるのが恥ずかしくて、俯いた。顔から火が出そうなほど熱い。 言葉を絞り出せずにいる那津を、小次郎は辛抱強く待っている。 「那津さん……?」 「お……俺も……好き。小次郎のこと……」 パアアッと効果音が聞こえそうな勢いで、小次郎が破顔する。 心底嬉しそうな、クシャクシャの笑顔だ 「僕を、那津さんの恋人にしてくれますか」 「……うん」 やっとの思いで告げた那津の口に、小次郎の唇が優しく重なった。 「んっ……」 角度を変え、やわらかく何度か吸われた後、大切なものを包み込むように、ギュッと抱きしめられる。

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