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想い 12
はあーっと、安堵したように、小次郎がため息をついた。
「ああ……ヤバいです。嬉しい…………那津さんが僕を好きになってくれるなんて奇跡みたいで、本当に嬉しい……夢みたいです」
「そんなの……俺だって……」
好きな相手にキスされて優しく抱きしめられて嬉しくて、胸がキュンキュンするなんて、まるで恋する乙女だ。
でもそれでいい。
好きな人から告白されて、自分も気持ちを伝えられることが、こんなにも幸せな心地になることだなんて、知らなかったから。
幸せすぎて、自分の細胞が全部ピンク色に生まれ変わっていく気さえする。
那津が腕の中でうっとりしていると、小次郎が遠慮がちに言った。
「あの、那津さん……僕本当は、那津さんをご自宅まで送り届けるつもりでいたんですけど……今夜……泊まってくれませんか……」
「――えっ……」
ずっとドキドキしているせいで身体は熱いまま、怖いくらい真剣な表情の小次郎と視線がかち合う。
那津だって男だ。今夜泊まる事が、どんな意味を持つのかわかる。
さっき小次郎が優しくキスしてくれたけど、その先もしてみたいし、小次郎をもっと深く知りたい。貪欲に求め合ってみたい。
相手が小次郎だから、何をされてもきっと嬉しいはずだ。
「俺、泊まってく」
「那津さん……意味わかってますか」
「わ、わかってるよ!」
小次郎の背中に回した手に、力を込めた。
「……さっきのキスみたいに、優しくできないかもしれませんよ。……僕は、ずっと自分を抑えてきたから……」
身体が震えるのは、嬉しいからだと嫌でもわかった。
那津は、たまらなくなって小次郎の身体ごと倒れ込む。
「ぅわっ、那津さん」
「俺だってお前が好きなんだよ! だから……抑えなくて、いいから!……」
そう叫んだ那津の唇は、今度は乱暴に塞がれた。
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