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極甘の夜 1
唇をそっと離し、那津の肩を抱いていた小次郎の手に力が込められた。
――唇、すげえ熱かった……。つーか、初めてこいつとキス……
すぐに離れてしまったが、初めてのキスは熱くて、ひどくドキドキした。
小次郎は、那津を身体に乗せたまま、抱きしめてくれている。
いくら那津が細身で小次郎より軽くても、全体重を預けたら重いはずだ。
「ごめん、重いよな」
那津が身体を起こそうと身動ぎするが、それを阻むようにますますきつく抱きしめられた。
「おいって」
「ダメです。まだ、このままでいてください」
「俺は女子じゃねえんだから重いだろ」
「この重みが嬉しいんです」
ジタバタしても、腕の強さは緩まない。那津は諦めて、身体を小次郎に預けた。
「……嬉しいのかよ」
「はい」
「なんで」
「那津さんはかっこいい男性なんだと、改めて実感できるからです」
「そうかよ」
耳元で、小次郎の熱い息を感じた。
「那津さん、僕は本当に那津さんさえ傍にいてくれたら、他に何もいらないんです……」
「小次郎……」
きつく抱きしめられると、すごく安心する。
そして、ずっとこうされたかったのだと、実感した。
「好きです、那津さんが、好きだ」
苦しげに告げられて、胸の奥がギュッと甘く痛んだ。
「那津さん、どうしても嫌なら逃げて、僕を殴ってでも逃げてください」
抱きしめる腕がわずかに緩む。
「やだって言ってるだろ」
腕の拘束を緩めてほしくなくて、自分からもしがみついた。
「……途中で嫌だと言っても止められないですよ」
ワントーン低く、冷たくも聞こえる声で告げられ、全身が波打つようにわななく。
身体の奥深い部分が反応していた。
「う……。つい、嫌とか声に出るかもしれないけど……俺は、逃げねえ!」
もしかしたらとうすうす感じていたが、やっぱり俺はマゾッ気があるのかもしれない。
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